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2005年5月31日火曜日

夢京橋キャッスルロード / 国文学独特の情緒


夢京橋キャッスルロード

 夢京橋キャッスルロード(写真)は江戸時代の街並みを再生した彦根の新しい観光スポット(2005年5月24日撮影)。

国文学独特の情緒

 高校時代の交換日記から

(Ted)

1952年8月21日(木)晴れ

 関西学院を脱けて東京へ、大学へ。慎太郎の努力は不運の彼自身を着々と高めている。全部読み終わらなければ、この蘆花の自伝的小説 [1] の主人公については、まだ考察できないが、思いのほか興味深く読んでいる。この間まで『アンナ・カレーニナ』を読んでいたぼくには、考察の論理性の少ないことが、始めのうち物足りなく感じられた。しかし、国文学独特の情緒と、自然と感情の日本画的な表現には、翻訳物では味わえないものがある。
 金属機械によって絶えず製造されている材木の新鮮な匂いがときどき漂って来て [2]、本の香りと一緒に鼻を楽しませてくれるのを感じながら、午後のほとんどを慎太郎と過ごしてしまった。

 引用時の注

  1. 徳富健次郎(蘆花)の『思出の記』(岩波文庫判、上下2冊、1939)。私が当時読み、いまも持っているのは、1952年発行の第8刷、臨時定価百二十円、旧仮名遣い、旧漢字使用のもの。

  2. 二階に間借りしていた家の向かいが製材所だった。

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