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2020年1月18日土曜日

水滴の「ぽちゃん」(What Makes a Dripping Faucet Go ‘Plink’)

[The main text of this post is in Japanese only.]


チコちゃん(❤AYA❤️さん作成、GMO Media 提供のフリー画像)。
Chiko (free image created by ❤AYA❤️ and provided by GMO Media).

 2020 年 1 月 18日(土)午前 8:15~午前 9:00 の NHK 総合テレビ番組『チコちゃんに叱られる!』を見た。出題の中に、「水滴の "ぽちゃん" ってなんの音?」というのがあった。物理学を専攻した私は、なんとか正解を当てたいと思い、水滴が水面に達した時の接触音と跳ね上がった水滴が再度落ちた時の音とか、水の粒だけでは音が出なくて、空気を含んだ気泡が出来てそれが空中で弾ける音が関わっているだろうとか、考えてみた。しかし、チコちゃんの解答は「100 年間、世界中の科学者の間でずっと謎だったけど、"ぽちゃん" でなく、"ぽ" と "ちゃん" であることが、ついこの間やっとわかった」であり、科学者たちがごく最近突き止めたばかりの研究が紹介された。その研究の一つの動画付きニュースが文献 1 にある。

 文献 1 に紹介されている研究は、ケンブリッジ大学の工学者、アヌラグ・アガルワル氏らの研究チームが学術誌に発表したものである[文献 2]。「ぽちゃん」という音は、水滴が水面に衝突したときの音ではなく、衝突からわずか数ミリ秒後、水滴によって水面にくぼみができ、くぼみが反動で元に戻ろうとするとき、水面下に小さな気泡が生じ、この気泡こそがぽちゃんという音を発生させる元だったということである。気泡は毎秒5000回振動しており、この振動がさらに水面を震わせて、あの音が出るという。

 しかし、この研究報告の動画には音がついていない。そこで、『チコちゃん』の番組スタッフは、この研究を追試している日本の研究者たちを訪れた。それは筑波大学大学院システム情報工学研究科の京藤敏達教授らのチームである。彼らの測定では、水面下に小さな気泡ができた時の、「ぽっ」と音がする波形が記録された。続いて、水面上に立ち上がった水柱が少し遅れて「ぴっ」と小さい音を出すこともわかった。これでは、まだ「ぽちゃん」の解明にはならない。なお研究が必要だという。

 ここでテレビ放映では、「それの答えが何の役に立つねん」という声が出た。これに対する京藤教授の答えがすばらしい。「今役立つことは、将来役立たないが、今役立たないものは、将来役に立つ。」研究予算配分にあずかる役人や政治家によく味わってもらいたい言葉である。

 ところで、文献 1 の元の英文記事[文献 3]や文献 2 では、「ぽちゃん」は "plink" である。このオノマトペ式の英単語では、短くて、まだ解明すべき点が残っていることが表せない。
(つづく)


 [文献]
  1. 「水滴の『ぽちゃん』、音出る仕組みを解明」、ナショナルジオグラフィック日本版サイト、https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/062600279/(2018 年 6 月 22 日)。
  2. Phillips, S., Agarwal, A. and Jordan, P., "The Sound Produced by a Dripping Tap is Driven by Resonant Oscillations of an Entrapped Air Bubble." Sci. Rep. Vol. 8, p. 9515 (2018)
    doi:10.1038/s41598-018-27913-0.
  3. "Here’s What Makes a Dripping Faucet Go 'Plink.' " National Geographic,
    https://on.natgeo.com/2tktTnD (June 22, 2018).

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