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2023年1月13日金曜日

夢と記憶の妙 (Mystery of the Dream and the Memory)

[See the English version of this post.]E. U. コンドン、G. H. ショートレイ著「原子スペクトルの理論」、Amazon のウェブサイトから
"The Theory of Atomic Spectra" by E. U. Condon & George H. Shortley, taken from the Web site of Amazon
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 覚醒時には何十年も思い出したことのなかった一冊の本に関する記憶が、突然、夢の中に出て来た。Condon–Shortley(コンドン と ショートレイ)という2人の共著者の名前としてである。目覚めてから考えても、その本の題名は覚えていなかったが、多分、物性物理学関係の本だろうと思った。著者名でインターネット検索してみると、"The Theory of Atomic Spectra"(原子スペクトルの理論)という1935年発行の名著だと分かった[注1]。物理学を二つの分野に大別すれば、物性物理学と素粒子・原子核物理学分野になり、原子スペクトルは確かに前者に属する。

 私の大学生時代は戦後比較的まもない混乱期で、物理学の各分野の名著が海賊版でいくつも出版されていた。そして、それらを出版業者から取り次ぐアルバイトをしていた 1 年先輩の学生が、私たちの講義を受ける教室へもよく宣伝に来ていた。この本の海賊版についても彼が、「今度 Condon–Shortley が出ます。 原子スペクトルの理論についての名著です」というように宣伝したのが、頭のどこかにこびりついていたのだろう。原子スペクトルに関する講義の中でも、教官が「これについては、Condon–Shortley の本に詳しく書いてあります」と話したかも知れない。また、同期生の誰かが「Condon–Shortley(の海賊版)を買おうかどうしようか迷っている」と言っていたのも聞いたかもしれない。

 私が大学で専攻したのは「原子核」で、「原子」スペクトルについては関心がなかったので、その本を読みたいと思ったことはなく、その本のことを思い出したことも卒業以来 65 年余り全くなかった。それにもかかわらず、著者名だけながら、夢の中で思い出すとは、まことに奇妙で不思議なことである。


 注
  1. 発行所のウェブサイトに次のように書いてある:最初に出版されたとき、"Nature" 誌の批評家は次のように述べている。「人類の既存の知識が巧みに統合してあり、何年にもわたって今後の研究の出発点となるとともに、研究者たちにインスピレーションを与え続けると思われる、強力かつ完全な、第一級の本であるという印象を受ける。」(英文から筆者が意訳。
    https://www.cambridge.org/jp/academic/subjects/physics/atomic-physics-molecular-physics-and-chemical-physics/theory-atomic-spectra)

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