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2004年12月13日月曜日

折々に詠む

 私はときどき短歌を作ってみたくなる。真剣に作り方を学ばないので、上達はしない。しかし、折々の思いをなんとか 31 文字に封じ込むのは楽しい。ここには 2002 年の後半に詠んだものを集めた。多いのは故郷金沢へ中学校の同期会に参加するため、そして墓参のために行ったときのものである。

原色の躍動をもて視体験超越したりカンディンスキー
慰みに春琴抄を繙けば佐助の愛にたじろぎ覚ゆ

梅雨休み青田に風の輝きてサンダーバードの車窓駆け抜く
北陸路家毎に競ふ紫陽花の色豊かにも飛び去りて行く
利家とまつのブームを避け行きて手取のダムの風に浴しつ
新婚の親友訪ひし町あたりそぞろ歩きて冥福祈る
勝手知る香林坊へ薄暮より歩みてみれば汗かきぞする
故郷の作家の「外科室」読みたればそは激烈の愛を描けり
小枝にて後ろ髪触れ虫ゐたとかつて言ひにし卯辰山かな
幼子と遊ぶ婦人に又五郎町問へば町会の名に残れりと
消へ去りし町名標す石柱に伝統尊重生き延びてあり
テレビにて邦画「はつ恋」見たるのち中学同期の会に赴く
久しぶりですねを交はしいと易く昔の恋は今の友情
あじさいの葉裏へ蝸牛回り行き歌詠む人ら感嘆し居り
台風の遥けき余波に空青く風豊かなる真夏日来たり

「であるか」と熱演したる反町の信長舞ひて美死を遂げたり
為さむこと捗らざるも悠たらむ蝸牛も這ひて遠路行くめり

聞き比べガイドの奉仕する友を蓄音機館に訪ね語らふ
ラッパ付き蓄音機より流れ出るエディット・ピアフ愛でしひととき
伝統の街に似合ひの小館に活弁付きのチャップリン観たり
故郷の文豪鏡花記念する館は老舗の裏にありけり
旧友が墓守の店助けゐて昔話にしばし興じぬ
雨なれば利家の墓近からず六男系の墓のみ拝む
墓参終へ犀星読めば三人の若者墓と化するぞ奇しき
麩天心昼餉となして風のごと墓参旅行も過ぎ去りにけり

鱧料理愛でる窓より白鷺の三々五々と帰り行く見ゆ
東山仏の臥せる腹辺り白鷺の群れ家路を急ぐ

  大海人皇子「むらさきのにほへる妹を憎く
  あらば人妻ゆゑに我恋ひめやも」に寄す
上の句を忘れてありし万葉の人妻恋ふる歌の熱しも

コメント(最初の掲載サイトから若干編集して転載)

Nadja 12/13/2004 15:56
 こんにちは。
 短歌って、みそひともじに凝縮された思いを感じられるのは楽しいですね。最近は詠むより読む方が多いです。
 僭越ながらいいなぁと思うのを3首。
  「であるか」と熱演したる反町の信長舞ひて美死を遂げたり
  為さむこと捗らざるも悠たらむ蝸牛も這ひて遠路行くめり
  麩天心昼餉となして風のごと墓参旅行も過ぎ去りにけり
そういえば雷鳥もサンダーバードとよび名を変えて顔まで外人っぽくなってしまいましたね^^;

Ted 12/13/2004 19:59
 「いいなぁと思」って貰えるのがあってよかった!「雷鳥」号もまだ残っています。Nadjaさんも北陸本線を利用されますか。

とら 12/13/2004 16:05
 Ted さん、こんにちは。
 素敵な短歌ですね。Ted さんのお人柄がよく出てる。私は、
  久しぶりですねを交はしいと易く昔の恋は今の友情
が一番好きです。「昔の恋は今の友情」ってところに、人の感情の変化が出ていて、とてもリアルだと思いました。今度、返歌させてください(^-^)。

Ted 12/13/2004 20:02
 「久しぶり…」の一首には、大切な思い出と経験を込めました。返歌をお待ちしています。

M☆ 12/13/2004 16:40
 Ted さん本当に多才ですね! もののあはれを感じることが少なくなった現代に、癒しの風が吹いた感じでした(^_^)また遊びに来ます!

Ted 12/13/2004 20:09
 『ランダムハウス英和大辞典』によれば、coffeehouse には、「17、8 世紀の英国で、文人、政治家などがたまり場として利用した店」の意味があります。Ted's Coffeehouse も、よいたまり場にして行きたいと思っています。

とら 12/14/2004 00:22
  青き日に思った人をいつまでも胸にとどめて初冬の道を  とら
拙い返歌でした。

Ted 12/14/2004 08:26
 「返歌」ですから、私の「昔の恋人」の身になって作ってくださったのですね。いかにも、その人らしいです。とらさんはいまが青き日々、ご健闘を

未月 12/15/2004 13:36
  「であるか」と熱演したる反町の信長舞ひて美死を遂げたり
 この「であるか」とともに、反町氏の演じた信長はセリフの語り口や立ち振る舞いの動作すべてが美しく、今でも強く印象に残っています。
 31 文字の中に日常を詠み込む短歌。憧れますが、なかなかうまく作れないものです。

Ted 12/15/2004 15:46
 私は「大河ドラマ」を見ない年が多いのですが、「利家とまつ」は、舞台が私の郷里だったので、熱心に見ました。信長に比べ、利家の演技は軽すぎたように思われました。「私におまかせ下さい」の、まつもかなり印象に残りましたが。
 短歌は、うまく作ろうと思わないで、楽しんで作ればよいと思います。

Ted 12/17/2004 17:44
 まつがよく言っていたのは「私におまかせ下さりませ」でしたか。

未月 12/17/2004 18:44
 でありましたね~(笑)。私も大河は見ない年がありますが、印象に残る作品です。

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