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2005年2月7日月曜日

てんやわんやの一日

高校時代の交換日記から。

(Ted)

1952 年 2 月 11 日(月)曇り

 獅子文六が、犬丸順吉を主人公とする小説の題名として作り出した副詞 [1] は、Sam が運動会で拾った情景を記事 [2] にした時の見出しとしてもぴったりしていたが、きょうのぼくにも、ぴったりだ。
 6 限の英語の試験、"Complete the following sentences:" の1題目、"Smallpox would be prevalent, __________" のところへ "if we did not enforce vaccination." と書いた。と、この通りならば、それでよいのだが、教科書の Activities にあったのは、上記のように "be prevalent" だったけれども、その部分が試験問題では、"be prevented" となっているではないか。"prev" までが同じだから、Activities の通りだと思い込みやすい。しかし、"be prevented" ならば、意味は完全に反対だ。そこで、"be prevented" であることを確かめて、答を "if we enforced vaccination." と直した。だが、現在は "Vaccination is enforced." という状況であるから、このような答を求める問題を作るのは、少しおかしい。Uncivilized countries のことと考えればよいのかも知れないが。
 また、別の問題中の drawn の語が、ちょっと見たところ drown でなければならないような気がしたので、a を o に直す書き込みをしたまま提出した。これはぼくの思い違いだったと、あとで気づいた。採点には関係がないが、I・S 先生をいぶからせるようなことをしてしまった。
 土曜日の解析の試験の解答が3限にあった。x2/9 + y2/4 > 1 の範囲を示すのに、原点の座標を代入して成立するか否かによって、楕円の中か外かを見るという操作をした覚えがなく、「あっ、勘で書いて合うた。」と叫んだが、いま考え直すと、x2/9 を右辺へ移行して、両辺の平方根を取ったもので考えるというややこしいことをして、正答を出していたようである。——以上が、てんやわんやの中身である。
 朝出がけにカラーの左襟の方の先が折れたことは、迷信的解釈で、てんやわんやの原因とするのには都合のよいことだ。しかし、われわれは、accidental accordance [3] だと、科学的に考えなければならない。

 あすのホームルーム時の討論会のテーマを考えて提出したのは、ぼくだけだった。「こんなものでテーマになるだろうか」と思いながら書いた二題を、UE 君がショート・ホームの時間に読み上げ、これらについて討論出来るように考えを練って来ることを一同に要求した。「ほほぅ、誰が考えたい」「あとの方が面白そうや」「前のがもいいぞ」などという声が聞かれたが、自分では少しも新しくも奇抜でもないものを書いたつもりだ。
 放課後、HN 君の家へ教えに行く。単元 3 の III 全体の試験が金曜日にあるのだ。「解析の」と書かなければならなかったかい? そうだ。KZ 君から3限後の休み時間に、先週その教室でぼくが「分かった!」と、いきなりいったと同じ突然さで、「147 ページの 1 の(5)を教えてくれんか」といわれて、「国語か英語か」と聞き返してやったのだが、手はちゃんと解析の教科書を鞄から出していた。

(Sam)

 ホームルームのレクリエーションはけっきょく二ヒントまでの「私は誰でしょう」をすることになった。出題は芸能関係が約半数を占めた。原節子や何とかいうバレリーナなど。源氏鶏太についての第一ヒントの復唱で、司会者が「三等毎日にサンデー重役というのを…」と、いい間違えた時、この時間で最もよく笑った。アイゼンハワーの問題はよく作られていた。あっけなく当てられたのは、福沢諭吉、中谷宇吉郎、エイブラハム・リンカーンなどだ。ぼくの出題は、「その日はちょうど豆まきをすませたあとでしたので、『夕刊!』といったお父さんにそれを投げて上げたら、はげ頭に当たってカンカンに怒られましたが、お母さんが弁解してくました」というのが第一ヒントの架空の人物だったが、第二ヒントで説明しすぎたので、簡単に分かってしまった。
[4]


 引用時の注
  1. てんやわんや。第 4 節の終わりにこの言葉を出してある。
  2. Sam と私が共に通っていた紫錦台中学の学校新聞に掲載の記事。
  3. Sam が英単語暗記用の本の A から覚え始めて、accicental と accordance を早くに覚えたので、「偶然の一致」をこのように表現したことがあり、ここでは、それを真似たのだが、coincidence あるいは synchronicity というのが普通であろうか。
  4. 第一ヒントでも分かりそうなものだ。漫画『サザエさん』に登場するサザエさんの弟、カツオであろう。

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