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2005年7月10日日曜日

カプリ島の時計塔(写真)/ 笑いにはさまざまな種類が



イタリア、カプリ島の時計塔(2003年5月13日撮影)。

笑いにはさまざまな種類が

 高校時代の交換日記から

(Sam)

1952年9月28日()晴れ

 きのう、きょうと、日記が映画観賞記になりそうだが、仕方がない。きょうは A と大和劇場へ行った。業務入場証を使用するので、どうしても午前中に劇場の中へ入る必要があり、昼食をとって行かなかったが、帰ったら三時を過ぎていた。
 「泣虫記者」は誇張した感じがある。が、次長が夢の中でいった「新聞記者の宿命的な使命」については、真に相づちをうってよい。新聞社会の断片を観察するには好適なものだった。エノケンとアチャコで笑わせる「トンチンカン捕物帖」は、探偵的ないしは悲劇的な要素を持っていたが、探偵映画としては不親切だし、物語には悲劇的なところがあるが、そればかりではない。要するに、物語を面白くするために謎をからませた娯楽映画ということになる。昨日から三本の映画を観て、笑いあるいは滑稽さには、さまざまな種類があることを改めて認識した。
 劇場内で、一人の美青年に会った。彼はぼくを認めて席を近づけて来て、「こんにちは」と挨拶した。どこかでの同級生らしいということだけが判ったが、誰だか見当がつかない。びっしょり汗をかいた。顔が紅くなった。彼は、「高中 [1] のとき、ぼくは M 君 [2] の前の前に座っていた」といったが、それでも思い出せなかった。彼はついに、HM だといった。Ted たちが訪問したが留守だった HM 君ではない。その当時は数箇所につぎのあたっているくたびれた国民服を着ていた彼だが、いまは調髪し、服装もさっぱりしている。高中の近くにある彼の勤務先が、きょうは休みなので、ここへ来たのだそうだ。明治キャラメルを二個、手のひらにのせてくれた。


 引用時の注

  1. 「たかちゅう」と読む。高岡町中学校の略。Sam は1年生の間、高中へ行っていたが、2年生になったとき、彼の住んでいた町は、私と同じ紫錦台中学の学区に変更になった。

  2. Sam のこと。

 [以下、最初の掲載サイトでのコメント欄から転記]

Y 07/11/2005
 Samさんの映画評は読みやすいですね。今の映画評論は、なるほどと納得するのですが、映画自体も映画評論も込み入っていて、Ted さんたちがこの頃観られた映画とはだいぶ違うかなと想像します。休息や軽い気分転換で観られる長さではなくなりましたしね。
 その次の美青年に会った話が私は興味深いです。Sam さんはこういう体験をそのまま表現されるので、正直な方ですね。私の周囲にも Sam さんのような魅力的な友人がいたらなあと思います。最後の文で「明治キャラメルを二個、…」と簡潔に心温まる出来事を書かれているのが上手いですね。

Ted 07/11/2005
 Sam は「顔が紅くなった」と、簡潔に書いていますが、私ならば、自分の顔色は見えないという理由で、「頬が熱くなる感じを経験した」などと書いたでしょう。私も「明治キャラメルを二個、…」という記述に感心しました。

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