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2005年7月25日月曜日

物理学の「場」(The "Field" in Physics)


写真は金沢城の石川門。先に掲載のものは石川橋と合わせて撮ろうとして、石川門の櫓があまりにも真正面になったので、これは少し左へ移動して撮った(2005年7月22日)。

The photo shows Ishikawa-mon Gate of Kanazawa Castle (taken July 22, 2005).


物理学の「場」(The "Field" in Physics)

Read in English.

 私のブログ友だちの一人・Y さんの最近の記事 [1] 中に次の文があった。

福祉現場や福祉的活動であれ、社会のさまざまな現象であれ、ひとのふるまいに接してそれを研究する場合、彼が語り、動き、私もそこに居合わせるひとりとして多くのことを感じる。この「場」を形成する動きについて私は学問的に考察する。

私はこの文を読んで、社会福祉の研究は素粒子の研究に似ていると思った。両者はともに相互作用や「場」に関わるのである。この思いから、物理学において重要な「場」の概念について、ここに簡単に紹介したいという気になった。

 私たちは、日常生活において、磁力や電気力、重力に接するが、これらはそれぞれ、磁場、電場、重力場によって生じている。皆さんは、棒磁石の周囲に鉄粉を撒くと、磁場の様子を見ることができるのをご存知だろう。電場と磁場は電磁場として統一できることが、J・C・マクスウエルによって、19世紀に理論的に発見された。このような場を媒介するものは素粒子である。電磁場は光子によって、重力場は重力子によって媒介される。(重力子は、実験的にはまだ発見されていない。)

 各種の素粒子は、光子やグルーオンの質量がゼロである場合も含めて、一定の質量を持っている(グルーオンは、「強い原子核の場」を媒介する粒子であり、この場がクォークを結合して陽子や中性子を作っている)。現在、物理学者たちは、質量は素粒子が「ヒグス場」と名づけられた場と相互作用することによって生じ、また、ヒグス場は「ヒグス・ボソン」という名の素粒子によって媒介されると考えている。(この考えは、素粒子物理学の標準模型や超対称標準模型をもとにしたものである。)――ここで皆さんは、「鶏が先か、卵が先か」という問いを思い浮かべるだろう。――

 高エネルギー実験物理学という分野では、現在、上記の考えを確かめるために、ヒグス・ボソンを発見することが一つの主な目的になっている。そのためには、アメリカのフェルミ国立研究所にあるテバトロン・コライダーや、ジュネーブの近くにあるヨーロッパの素粒子研究所・セルンで建設中のラージ・ハドロン・コライダーなどの巨大装置が使用される。それは人類の知の最前線を推し進める壮大な計画の一つである。(質量とヒグス場については、最近のサイエンティフィック・アメリカン誌 [2] で、もう少し詳しく知ることが出来る。)


  1. Y, Deed to produce happiness (July 17, 2005) (In Japanese; this Web page disappeared later).
  2. G. Kane, "The Mysteries of mass," Vol. 293, No. 1, p. 31 (2005).

 [以下、最初の掲載サイトでのコメント欄から転記]

Y 07/27/2005 08:41
 わかりやすい英語で、なかなか知りえないことがよく勉強できました。今の福祉の研究状況では、interactions や "field" についての考察だとはっきり表明する人は、とくに "field" =「場」という概念のほうは、「(福祉)現場」という言葉ほどにはまだまだ普及しきっていませんが、内容的にはこれらの概念に集約される研究が多いですし、いずれこのような理論的抽象度をもって、先行する近接分野の研究とも話がかみあうようになることだろうと思われます。
 物理学では、場にしても素粒子にしても、理論的にその存在が発見されるほうが先行するのですね。それを実験物理学で確認することが、巨大装置を必要とするおおがかりな課題となるのですね。

Ted 07/27/2005 11:57
 嬉しいコメントをいただきました。物理学の理論はそれを整理、発展させる段階では抽象性が役立ちますが、数学とは異なって、実験的に検証できる具体的な予測を導くことなく、抽象性だけで終ってしまってはいけないのです。福祉の研究においても、抽象性の導入が役立つ場合があっても、そこから導かれる結果は、現実に福祉の向上に役立つことが重要かと思います。

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