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2018年12月6日木曜日

ツイッターでの再会、そのファインマンとの関係 (Reunion via Twitter and Its Relationship with Feynman)

[The main text of this post is in Japanese.]


私がロブに送った手紙の封筒と同封した「トゥヴァ友の会」のニュース紙。
The envelope of a letter I sent to Rob and the newsletter of "Friends of Tuva Japan" enclosed in it.

 ロブ・ウェイドとは、かつてメールを何回か交換した。その後、彼の名をツイッターで見つけて、フォローしておいたのも、もう何年も前のことである。しかし、彼はツイッターを当時あまり使っていなかったようで、フォローバックがなかった。最近になってようやくフォローバックがあって、むしろ驚いた。彼はツイッターのダイレクト・メールを使って、私が以前彼に送った手紙をまだ持っているといって、その写真(上掲)を送ってくれた。航空便を送ったことは全く覚えていなかった。その頃から、もう 20 数年も経ったのである。

 ロブとのメール交換の主な内容は、ラルフ・レイトン著 Tuva or Bust!: Richard Feynman's Last Journey(大貫昌子による和訳書の題名は『ファインマンさん最後の冒険』)の題名の由来を教えてもらったことである。それは 1990 年代半ばで、ノーベル賞物理学者リチャード・ファインマンの没後まだ 7、8 年だった。この本は、ファインマンが一市民としてトゥヴァという国を訪れてみたいと、レイトンとともに画策する話を記したものである。

 レイトンはこれにちなんで、ファインマンとトゥヴァのファン・クラブ "Friends of Tuva" を立ち上げていた。大阪在住の若い女性・法貴亜古さんがその日本版「トゥヴァ友の会」を作り、私もその一メンバーだった。そして、私は「トゥヴァ友の会」のニュース紙『のるかそるか通信』に、ファインマンについてのエッセイを連載していた。ロブが書き送ってくれた "Tuva or Bust!" の由来は、和訳してそのエッセイの中で紹介した。私がロブに送った手紙は『のるかそるか通信』のそのエッセイを掲載した号を同封したものだったのである。

 私自身は長らく保存してあった『のるかそるか通信』を 2、3 年前に処分してしまったが、同紙に寄稿していた 2 シリーズのエッセイ『ファインマンさんと私の無関係な関係』『いつでもどこでもファインマンさん』はホームページに掲載してあり、その英語版を 2009 年に作った自費出版書 Passage through Spacetime に収めた。したがって、この本には、ロブの "Tuva or Bust!" の由来を説明した原文が載っているのである。今回、彼の住所を聞いて(以前のヴァージニア州からワシントン州へ変わっていた)、ようやくその本を彼に贈ることができた。

 私がロブを知った経緯をここに書こうとしたが、思い出せなくて、パソコン上にある過去のメールをたどろうとしてみた。しかし、それはなかなか手間がかかりそうである。ロブの文を紹介したエッセイに手がかりはないかと、『いつでもどこでもファインマンさん』を見ると、そこに次のように簡潔に記してあった。
 […]Friends of Tuva のホームページへのアクセス方法を試みようとして、うまく行かなかったおかげで、"The Tuvan Hillbillys site" と称するページの作者 Robert M. Wade 氏(愛称 Robb)と email で話し合う間柄となった。『ファインマンさんと私の無関係な関係』の冒頭の一章の英訳を送った相手の一人は彼である。
これによれば、写真にある手紙の前にも、私は彼に手紙を送っていたようである。このあとに、ロブがトゥヴァやファインマンに興味を持った経過を含む、当時の彼のプロフィールも書いてある。
 Robb は 1990 年から 1992 年までモスクワに住み、アメリカ大使館付きの塗装家として働いていた。そこで一緒に働いていたアメリカ人の親友の一人が、モスクワへ来る前に彼の友人から Tuva or Bust! の本をもらい、ロシアに住んでいる間にぜひそこを訪れるべきだといわれて来たという。Robb もそれを借りて読み、すぐにトゥヴァにとりつかれた。
 Robb の友人は著者の Ralph Leighton に手紙を書き、トゥヴァに住む婦人 Rada Chakir の電話番号を教えてもらった。彼女の助けで、Robb とその友人がモスクワからトゥヴァへの困難な旅程をこなしてキジルに着いたとき、幸運にも第 2 回国際ホーメイ・シンポジウムが進行中で、Rada が最終公演のチケットを手配してくれた。彼らは伝統的な相撲の競技や、美しい自然の光景も見物した。
 この旅行でパラダイスを見た Robb は、それからの人生が変わってしまった。アメリカへ帰ってから大学へ戻り、ロシア語で学士号をとり、"Animal Imagery in the Tuvan Shamanic Healing" のテーマで修士論文を書いた。ファインマンさんに関する興味は Tuva or Bust! から始まったのだが、その後ファインマンさんの他の本も読み、金庫破りの話をとくに好んでいるとのことである。

 当時、ロブは修士課程を終えたばかりで独身だったと思われるが、まもなく結婚して息子をもうけたようである。来年、息子が 21 歳になるのを記念して日本へ旅行に来るという。大阪へ寄るならぜひ会いたいと書き送った。

 たまたま昨日、ファインマンについてのニューヨーク・タイムズ紙の記事が目にとまった["Rough Drafts of Richard Feynman’s Ideas Head to Auction(リチャード・ファインマンのアイデアの下書きがオークションに)"]。 この記事の著者 Kenneth Chang は「ファインマンは賢明だったが、完ぺきではなかった。オークションにかけられる論文の下書きを見ると、このことが明らかになる」と書いている。オークション主催者による関連 Web ページは "History of Science & Technology, Including the Nobel Prize and Papers of Richard P. Feynman"

 また、今年の 5 月 11、12 日にはファインマンの生誕 100 年を記念して、Caltech と PMA が盛大な記念行事 "Feynman 100" を行った(リンク先で講演のビデオなどを見ることができる)。Paul Halpern が Nature に掲載した "Richard Feynman at 100"、Melinda Baldwin の "Feynman the joker"、Tony Hey の "A Hundred Years of Richard Feynman"、Rob Lea の "Richard Feynman: the genius of simplicity"、Royal Holloway University of London の "Celebrating 100 years from the birth of Richard Feynman in Tuva" などの生誕 100 年記念記事もインターネット上で読める。American Association of Physics Teachers は "Celebrating Richard P. Feynman's 100th Birthday on May 11, 2018" と題するウェブページに同会の発行する雑誌に掲載されたファインマンの論文やファインマンの研究成果を紹介した他の研究者の論文を集めている。——ファインマンの話題を探し始めると、その仕事は尽きることがない。

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