湯川博士のノーベル賞論文(中間子論第1論文)は、偉大であるといっても、発表から72年を経過した古典であり、要点は教科書などで読める。最近の論文がその原論文をわざわざ引用することは滅多になさそうである。その後に発表された博士の非局所場の理論や、素領域の理論などの論文は、これと比べて、どの程度引用されているのだろうか。――このような疑問を解くため、Google Scholar で、"H Yukawa" と入力して検索したところ、66編の論文が出て来た。各論文の書誌データのあとに被引用数が記されている。ただし、現在 Google Scholar に出るのは、ある年以降の論文で、被引用数も主要な専門誌に引用されたものに限られているようだ [1]。
被引用のベスト3は、次の通りである(2007年8月4日調べ)。
1950年の Physical Review に掲載の非局所場理論の第1論文 "Quantum Theory of Non-Local Fields. Part I. Free Fields" 101件
1953年の同誌に掲載の素粒子の構造と質量スペクトルに関する第1論文 "Structure and Mass Spectrum of Elementary Particles. I. General Considerations" 85件
1955年に Supplement of the Progress of Theoretical Physics に再録されたノーベル賞論文 "On the Interaction of Elementary Particles. I " 39件
[1] 私の共同研究者たちと私による論文は、67編が Google Scholar の検索にかかり、最も被引用が多いのは、1972年に Nuclear Instruments and Methods 誌に掲載の、電子の外挿飛程の経験式に関する論文で、34件である。しかし、引用データ収集の専門誌 Science Citation Index による1999年までの調査で、同論文の被引用は89件に達していた。昨年、Google Scholar で同じ検索をしたときには、被引用数がもっと少なかったということもあり、Google Scholar のデータべースは、なお充足中の段階と思われる。さらに、さる2007年7月2日の検索では、湯川博士のノーベル賞論文(再録)の被引用数が200件あったのが、今回の検索では、39件に「減っている」という、不思議な不安定さもある。