2017年11月13日月曜日

K・F 氏へ:私の論文集第 1 巻 (To K. F.: My Collected Works Volume 1)

[The main text of this post is in Japanese only.]


堺市八田荘公園の秋色。2017 年 11 月 10 日撮影。
Autumnal scenery of Hattasō Park, Sakai, taken on November 10, 2017.

K・F 氏へ:私の論文集第1巻

2017 年 11 月 5 日

K・F 様

 先日の電話では、先のメールに書き忘れた ResearchGate (RG) の最近の問題についてお話ししたいと思い、ややこしいことを述べて、失礼しました。文にまとめると以下のようなことです。

 先般、私がこれまで RG サイトに置いてきた post-print(大抵の出版社がインターネット上での掲載を許可している、発表論文の最終デジタル原稿。われわれが論文を投稿した時代は、ほとんどデジタル投稿ではなかったので、別刷りをスキャンして、逆にデジタル原稿を作っています)のうち、Elsevier に著作権のあるもの(かつての North Holland、Pergamon、Academic Press などが Elsevier に吸収され、私の論文の大部分の著作権は Elsevier にあることになりました)が全て非公開の private file(掲載者自身しか見ることができない形)に変更されていました。

 不思議に思っていたところ、間もなく Nature 誌のオンラインニュースで、Elsevier が RG 社を著作権侵害で訴える準備をしているということを知りました。RG サイトには、Elsevier を始めほとんどの出版社が掲載を禁じている published version をそのまま載せている人たちが極めて多かったからと思われます(現今の digital reprint を使えば、published version の掲載には手間が全くかかりません)。

 私が置いている post-print は、公開しても大丈夫なはずなので、private file から公開の形に自分でいったん戻しましたが、考えてみると、コメントなどを付けている点で、post-print の掲載規定には反しています。そこで、それらをまた private file に戻しました。しかし、private file のままにしておくことや、コメントを消去してしまうことは惜しいので、この際、コメントを付けた体裁での掲載が可能な、自分のデジタル論文集にまとめようと思い立ちました(post-print の掲載さえも許可していない雑誌もあるので、いずれそういうものを作るつもりでした)。

 以上のような次第で、まず、修士課程時代の論文 5 編を第 1 巻としてまとめましたので、添付します。論文 1、2、4 に付けたやや長めの「歴史的」コメントは、貴殿にもご興味があろうかと思います。ご笑覧いただければ幸いです。

 余談ですが、今年のノーベル文学賞を得た Kazuo Ishiguro の "The Remains of the Day" を中学時代からの友人が原書で読むといってきたので、私も負けずにと思って注文していたのが、昨日届きました(注文時点では品切れでした)。到着したペーパーバックの表紙には、"Winner of the Nobel Prize in Literature" と、ちゃっかり印刷されています。読みやい英文です。

 T・T


 引用時の注:ここに掲載するに当たって、若干の修正をした。なお、私の論文集第 1 巻はこちらからダウンロード出来る。
 Kazuo Ishiguro のことだが、私は以前からその名を知っていたので、彼のノーベル賞受賞が発表された時、かつてテキスト(概ねペンギン社のペーパーバック)を買うまでして熱心に聞いていた NHK のラジオ番組『原書で読む世界の文学』で、彼の作品が取り上げられたことがあったのだったかと思った。そこで、本棚をあちらこちら探してみた(それらのテキストはパソコン上の蔵書リストに入れてないが、まだ処分もしていない)。しかし、彼の本は見つからなかった。思い当たるのは、オンラインのニューヨーク・タイムズの書評を時々読んでいるので、彼のどの本かの書評が載った時に、日本名の作家が取り上げられた珍しさで、その書評を詳しく読んだのではなかったか、ということである。