2011年4月23日土曜日

「鑑みる」の用法 (How to Use the Japanese Word "Kangamiru")

 最近、「〜に照らして考える」という意味の言葉「鑑みる(かんがみる)」の間違った使い方が目につく。先に日本原子力学会のウエブサイトに、『…「2011年春の年会」は、東北地方太平洋沖地震の影響、および福島原子力発電所の状況等を鑑み、中止することとなりました…』という文を見た。辞書の用例によれば、「を鑑み」でなく、「に鑑み」というのが正しい。「〜を考慮して」という表現との混同があるのだろう。

 けさ町内の回覧板に添付されて来た、堺市建設局公園緑地部長の名による通知にも『…東北地方を中心に大きな被害が発生している状況を鑑み、堺市では…「浅香山浄水場つつじの通り抜け」を中止…』とあった。「〜を考慮して」といえばよいものを、通知に威厳を持たせようとしての計らいか、「鑑み」などという古い言葉を使うから、国語の知識のボロが出る。目下、いろいろなところで東日本大震災に鑑みた自粛などが行なわれる時期である。「鑑みる」を正しく使って貰いたい。

 後日の注記:本記事の続編を書いた。こちらでご覧になれる。

The rather old Japanese word kangamiru to mean "in the light of" should come after the particle ni. These days, however, I have seen the improper use with the particle o in the followings: the statement at the Web site of the Atomic Energy Society of Japan to cancel the spring meeting and the statement of the Construction Bureau, Sakai City, to cancel the Azaleas Walk Through at Asakayama Water Treatment Plant. Now, it is the occasion that many events are canceled in the light of tragic news of Tohoku earthquake and tsunami. So, I wish that the word is used correctly.

Note added later: A continuation to this post can be read here, but it is given in Japanese only.

5 件のコメント:

  1. 「~~を鑑みる」を誤用と断じる前に、何故複数の辞書を参照しないのでしょうか。
    現代国語例解辞典第二版(1993)「現状を鑑みるに」
    岩波国語辞典第五版(1994)「時局を鑑みるに」
    明鏡国語辞典(2002)「国際情勢を鑑みるに楽観視は許されない」
    旺文社国語辞典第十版(2005)「先例を鑑みる」
    精選版日本国語大辞典(2006)「臣が忠義を鑑みて」(太平記)
    集英社国語辞典第三版(2012)「時局を鑑みるに」
    確かに広辞苑や大辞林には記載がありませんが、誤用と断じるからには参考文献を明記すべきです。
    「~~を鑑みる」の用法についてはネット内のみの参照が非常に多く、元となる記事でさえ誰かに指摘された個人的経験を根拠にしています。それがいかに危ういことか、研究に携わる方であればよくご存じだと思います。
    風説が風説を呼ぶ現況を憂慮して。

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  2.  神楽さん、ご指摘ありがとうございます。私が参照した辞書は、所有している『広辞苑第三版』(1983)、『大辞泉第一版増補版』(1998)、『新明解国語辞典第四版』(1997)、そして、オンラインの『大辞林』(2006年の第三版か、記事執筆の2011に参照)でした。これらの辞書にはすべて、たまたま、「... に鑑みる」の用例しかなく、「...
    を鑑みる」は誤用と考えてよいと思った次第です。『岩波国語辞典第五版』は所持していながら、参照を怠っていました。私は研究者ではありますが、専門が理系なので、この記事については、参考文献明記までの配慮が行き届きませんでした。ただ、「... に鑑みる」の用例しか記載していない辞書がいくつもあるということは、「... に鑑みる」の方が純正な使用方法である、という可能性もあるのではないでしょうか。
     なお、神楽さんのコメント中に、「元となる記事でさえ誰かに指摘された個人的経験を根拠にしています」とありますが、「元となる記事」とは何のことかが、理解できません(「文献を明記」すべきです)。念のためインターネット検索をしてみますと、『ビジネス文書で恥をかかない!「鑑みる」の正しい意味と使い方』という記事が見つかりました。しかし、これは私の記事より後に書かれたもので、私の記事を引用しています。私自身は、インターネット上の記事を参照して書いた(いただいたコメントからは、神楽さんがそのようにお考えのように取れます)のではありません。上記の記事を元にして、インターネット上で同じことを書いている人が多いということでしょうか。であれば、その記事の著者へもご意見を述べられてはいかがでしょうか。

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  3. まず、非常に誠実な対応をとっていただいたことに感謝いたします。
    他の「~を鑑みる」を誤用と断じる記事は現在コメントが付けられない仕様になっていたり、数年更新されていなかったりで対応に悩んでいるところです。その中で他の記事から参照されているあなたの意見が本当に辞書を引いて判断したものか、参考文献が明記されていない状態では判別がつきませんでした。あなたが引用について正しい認識をお持ちかどうか確認する意味も込めて、「元となる記事」にあたる文献を載せなかったことを謝罪いたします。
    改めて、個人的経験を根拠にした記事を記しますと、
    『「に鑑みる」「を鑑みる」』
    http://s.ameblo.jp/taba/entry-10451879036.html
    『日本語に対して敏感であれ』(コメントしたところ削除されたようです)
    http://s.ameblo.jp/arinko-aiko/entry-11613409363.html
    『 Q○○に鑑みるー国語は変移が定着したか?』(記事扱いの文)
    http://sp.okwave.jp/qa/q6861966.html

    他の問い合わせもできず、参考文献も明記されない例
    実用日本語表現辞典『諸般の事情を鑑み【しょはんのじじょうをかんがみ】』
    http://www.practical-japanese.com/2011/03/blog-post_9376.html?m=1

    「に鑑みる」と「を鑑みる」のどちらが現在「正用」かについては、辞書によって対応が分かれているとしか答えられません。私の方でも広辞苑・大辞泉・新明解の用例に記載がないと確認しました。しかし、前出のように採用している辞書もあることから、「を鑑みる」は少なくとも「慣用」として認められているとは言えます。


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  4. 匿名さん(先のコメントを下さった神楽さんと同じ方と存じ上げます。今回はお名前の入力をお忘れでしたか)
     私の返信へのご返信、ありがとうございます。
     いただいたコメントをもとに考察したことを、"続「鑑みる」の用法" として、近日中に新たなブログ記事にしたいと思います。

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  5.  続編を投稿しました。こちらでご覧になれます。

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