2018年6月23日土曜日

「『鏡映反転』に一言」 [Comment on a Review of "Kyōei Hanten (Mirror Reversal)"]

[The main text of this post is in Japanese only.]


わが家のカンナ。2018 年 6 月 21 日撮影。
Canna flowers in my yard, taken on June 21, 2018.

「『鏡映反転』に一言」

 先日、表記の題名で『大阪民主新報』紙に投稿文を送ったが、掲載されなかった。同紙の投書欄は、主に政治に対する批判を掲載する場所なので、ボツになるのは無理もないとは思うが、まことに残念である。そこで、投稿文を以下に掲載することにした。「一言」の対象は、書籍『鏡映反転』そのものではなく、上記紙上でそれを紹介した記事だが、紹介書の題名が記事の題名を兼ねる形になっていたので、投稿文の題名がこのようになった。



『鏡映反転』に一言

 6 月 3 日付本紙「今週の一冊」欄に、高野陽太郎著『鏡映反転』が絶賛されていましたが、これには異議があります。私はその本の中で批判されている「左右軸劣後説」の提唱者の 1 人です。高野氏の最初の論文に対する反論として提唱されたこの説に、国際的な専門誌上では軍配が上がり、これに対する高野氏の再反論は却下されたという経過があります。
 「左右軸劣後説」は鏡像の左右逆転を単一の原理で説明する明快なものですが、高野氏の批判は誤解に基づいます。氏がその後、別の専門誌に発表した実験も、被験者が何を基準として左右を判断しているかが曖昧で、受け入れられない面があります。
 鏡像の左右逆転に興味を持たれた方は、左右軸劣後説の立場から書かれた、吉村浩一著『鏡の中の左利き』(2004年、ナカニシヤ出版、税抜き2200円)を併読されることをお勧めします。


 注:投稿文では字数制限のため簡略化あるいは省略した若干の点を、ここでは分かりやすくするために修正した。

2018年6月13日水曜日

気になる外来語カタカナ表記 (Doubtful Katakana Expressions of Foreign Words)

[The main text of this post is in Japanese only.]


わが家のデイリリー。
Daylily in my yard.

気になる外来語カタカナ表記

 先日、NHK ニュースで中央アメリカ北部にある国の名を「グ・ア・テ・マ・ラ」のように発音し、字幕でも「グアテマラ」と表記していた。私の記憶では、この国は「グァテマラ」である。いつから「グアテマラ」になったのかと思ったが、先日買ったばかりの『広辞苑 第七版』[注 1]の付録を眺めていると、内閣告示第 2 号による「外来語の表記」の項が目に入った(この告示の全文はこちらで読める)。その中に
「グァ」は、外来音グァに対する仮名である。
として、まさに「グァテマラ」が例として挙げられている。そして、
一般的には、「グア」又は「ガ」と書くことができる。
という注がある。「グアテマラ」化は、この内閣告示(1991 年に出されている)の注書きに由来するようだ。結構古いことなのだ。しかし、この注書きやこれに類似の注書きは、外来語を本来の外国語の発音から遠ざけ、日本人の英語発音を外国人に分かりにくくし、わが国の非国際性を増大させるものではないだろうか。「グア」と書いてもその音は「グァ」だと理解すればよいようなものの、先の NHK アナウンサーの例のように、「グ・ア」という型の発音が定着して来ているのである。

 そのほかに私が気になる外来語カタカナ表記としては、ウエブ、グアム、クオーク、ツアー、ネイチャーなど、いくつもある。私と同様に疑問を呈している記事がインターネット上にないだろうかと検索してみたところ、『外来語(カタカナ)表記ガイドライン 第3版』(2015 年)という文書が見つかった。これは、一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会のカタカナ表記検討ワーキンググループがまとめたものである。適用範囲は「一般の使用者が直接、見る、聞く商品上に表記される、カタカナで表記される外来語」と限定されているが、参考のため、その表記規定を見ると、下記のように、やはり「グアテマラ」方式を採用している。
 「ウイ/ウィ」「ウエ/ウェ」「ウオ/ウォ」は「ウイ」「ウエ」「ウオ」を充てる。ただし、原語が「‐ware」の場合は「ウェア」を充てる。
 「クア/クァ」「クイ/クィ」「クエ/クェ」「クオ/クォ」は、「クア」「クイ」「クエ」「クオ」を充てる。

 ただし、このガイドラインでは「ウイ/ウィ」等の項に次の例外を設けてあるのがよい。
以下は「ウェ」「ウォ」と表記する。
ゲートウェイ (gateway)
ウェブ (web)
ファイアウォール (firewall)
「ウェブ」については、『広辞苑 第七版』でもこの表記を採用している。

 また、「クア/クァ」等の項に一つだけ例外を記してあり、これには物理学が専門の私は大賛成である。
クォーク(quark、物質の基本粒子)
『広辞苑 第七版』では「クオーク」としていて、はなはだ気に食わない。

 なお、このガイドラインの、長音の表記についての規定の中に、次の記述がある。
英語の語尾の ‐re にあたるものは、原則として長音符号「ー」を付けない。
この例の末尾に「ワイヤ (wire)」があり、これも大賛成である。「ワイヤー」という表記をよく見かけ、また、『広辞苑 第七版』の「ワイヤ」の項にも「(ワイヤーとも)」とあるが、これでは「ヤー」にアクセントがつきがちで、英語発音から大きく離れるため、私の使いたくない表記法である。

 まだまだ書きたいが(原語の発音に近く書くとすれば、アナウンサーの「ナウ」の部分も英語では 1 音節であり、「ナゥ」がよいということにならないか、など)、長くなるので、これくらいにしておく。


 注 1:『広辞苑 第七版』は今月末まで完成記念特別価格だというので、このたび買うことにしたものである。初版(1955年発行)を学生時代にアルバイト代で購入し、その後、第三版(1983年発行)に買い替えたが、まだほとんど傷んでいなくて、どうしようか迷った。しかし、ブログにエッセイを書くときなどに「『広辞苑 第三版』によれば」としたのでは、いかにも参考文献として古すぎるので、決心した次第だ。