2018年5月21日月曜日

東京、2018 年春 (Tokyo; Spring 2018)

[The main text of this post is in Japanese only.]



上:私の定宿・学士会館の正面玄関。下:同会館北側にある「日本野球発祥の地」の記念碑。
Upper, the main entrance hall of my usual lodging, Bachelor Hall (Gakushi-kaikan); lower, the monument of "The birthplace of Japanese baseball" at the north side of the Hall.

 さる 5 月 17 日に東京で開催された金沢菫台高校第5期生の集まりに参加するため、16 日に上京した。その晩、私の定宿・学士会館へ同期会の幹事君が会いに来てくれ、同会館の和食堂「二色」でコース料理を楽しみながら話し合った。アメリカで働いていた彼の娘さん夫婦が、トランプ大統領のアメリカン・ファースト政策の影響で失職し帰国しているそうだ。トランプ政策がそこまで影響しているとは知らなかった。彼の奥さんが初期の認知症状態なのだが、自らはそうと認めないで彼とよく言い争うというのも気になることである。

 翌朝、学士会館においてあった冊子『ふらっと おさんぽ神保町:神保町レトロ建築さんぽ特集号』の地図を参考に、さくら通り付近を少し散策してから、同期会の会場へ向かった。会場は昨年と同じく、銀座 1 丁目「キラリト銀座」6 階にある「銀座の金沢」で、11名(うち女性 4 名)が集まった。遠路参加の私が乾杯の発声をさせられた。昨年末敷居につまずいて倒れ背骨を折って以来今回が初めての外出という女性や、お一人様になって女性向け体操教室に熱心に通っている女性や、医者の指示に抵抗して高血圧の薬を 2 日おきに服用している女性や、年に何回も海外旅行をしている男性や、頸動脈のコレステロール除去手術を勧められながらも海外旅行を目論んでいる男性や、1 年先輩である夫人が友人と南極旅行に行って来たという男性などがいて、なかなか愉快な集まりだった。——こう書くと、新しい参加者が多かったように聞こえるかもしれないが、参加者たちは皆この会の常連で、1 ないし 3 年ぶり程度に聞くそれぞれのニュースが興味深かったのである。参加者が昨年よりも 4 名増加したのは、高齢者の同窓会にしては珍しく喜ばしいことだった。

 旧制四高(現・金沢大学)のボート部員が琵琶湖で遭難水死した事故を歌にしたという、「琵琶湖周航の歌」と「真白き富士の根」の合いの子のような「琵琶湖哀歌」(奥野椰子夫・作詞、菊池博・作曲、東海林太郎と小笠原美都子が歌った;下の動画参照)の歌詞と楽譜を見つけてコピーして来た女性もあり、「頸動脈コレステロール」君はその歌を知っていて歌ってくれた。



一部分「琵琶湖周航の歌」にそっくりな節があると思ったが、『ウィキペディア』の同歌の説明にも、「メロディの半分ほどは琵琶湖周航の歌の借用である」と記されている。

 「海外旅行しばしば」君は、宝塚歌劇を東京でよく見るそうで、同歌劇の終演後に劇場に流される歌「さよなら皆様」(内海重典・作詞、河崎一朗・作曲;下の動画参照)を歌った。これは一同で校歌斉唱をする直前のことで、彼は校歌をあまり覚えていなかったため、校歌斉唱には無言でいる代わりとして歌ったもののようだった。



 校歌の歌詞は、最近送られて来た同窓会誌『金商菫台プレス』に載っていたので、そのインターネット版のコピーを私から幹事君に送っておき、当日、ハードコピーを参加者分だけ用意して貰った。私は校歌のメロディーをよく覚えている方だろうと自負していたが、他のほとんどの参加者たちもしっかりと歌っていた。

 以上のように、12 時から 15 時 20 分頃まで、郷土料理を食しながらたっぷり楽しみ、幹事ほか一同も記念写真の撮影を忘れてしまったまま解散した。

 その夕方、例年の私の上京時通り、先のブログ記事で紹介した『荒勝文策と原子核物理学の黎明』の著者・政池氏と M・Y 君に学士会館へ来て貰い、夕食も共にして、4 時間近く歓談した。政池氏から上記著書の執筆に関する裏話をいろいろ聞くことが出来た。私は最近自分のデジタル論文集作成に時間をかけていて、彼の著書をまだ十分には読んでなかった[注 1]。それで、詳しい感想を述べるべきせっかくの機会にそれが出来なかったのは悪かったと、いささか気がとがめ、帰宅翌日に彼へお詫びのメールを送った。

 東京の地下鉄で半蔵門線を利用すると、乗り換えに階段も含めてずいぶん長距離を歩くことになる。目下工事中の箇所も多く、今後はもっと便利になるのだろうが、よい運動になった。——と思っていたのだが、帰宅すると体重がかなり増えていた。ご馳走を食べながら座っていた時間が、歩いた時間よりもはるかに多かったからだろうか。

 追記:後日、男性参加者中の一人が、彼の友人・飯田忠義氏による「琵琶湖周航の歌」についての新しい研究書、『琵琶湖周航の歌:小口太郎と吉田千秋の青春』(2007 年、京都新聞出版センター;「琵琶湖哀歌」への言及とその楽譜・歌詞の引用がある)について手紙で知らせてくれた。ウェブサイト『三文楽士の音楽室』にも「琵琶湖周航の歌」について考察したページがあり、その第 8 章「『琵琶湖周航の歌』研究史」末尾にも同書が紹介されている。(2018 年 6 月 12 日)


 注 1:『荒勝文策と...』をまだ十分に読んでいなかった理由としてはもう一つ、読書の時間があれば英書を読むことの方を好むという私の性癖もある。今回の旅に携行する小さな本として、未読の文庫版や新書版の和書があるにも関わらず、それらを選ばないで、Bernard Malamud の "The Magic Barrel" という短編集のペーパーバックを選んだ。2005 年 4〜7 月に NHK ラジオ第 2 放送『原書で読む世界の名作』のテキストとなっていた本である。本題からずれるが、ついでに記せば、定年退職後だったにもかかわらず、この短編集についての放送を十分に聞いた覚えはない。『原書で読む...』は、むしろ私の定年退職前の愛聴番組だったが、2007 年頃に終わってしまったのは残念でもある。終わり頃にあまり聞かなかったのは、著名な作家の作品が出尽くして、あまり知られていない(少なくとも私にとって)作家の作品を取り上げることが多くなったためのようだ。