2004年10月31日日曜日

ファインマン、どういうひと?

 私のウエブサイトには、ファインマンについての随筆を掲載してある。そのためであろう、昨日、同サイトの E メール方式のゲストブック・ページから、次のようなコメントが届いた。

 「ファインマンの名前は、最近、コンピュ-タ-に関する本で見かけました。量子コンピュ-タ-の提唱者として紹介されていました。それと、J・ワトソンが分子遺伝学に関する本の中で、ファインマンによればといって、彼の分子生物学に関する意見を引用しておりました。彼は、生物学でも業績を残したのでしょうか?― K. Y.」

 私は以下の返事を書き送った。



K. Y. 様

 興味深いコメントとご質問をいただき、ありがとうございました。ファインマンが量子コンピュ-タ-の提唱者といわれるのは、彼の 1985 年の論文 "Quantum Mechanical Computers"[Optics News, Vol. 11, pp. 11–46;A. J. G. Hey and R. W. Allen 編 "Feynman Lectures on Computation" (Addison-Wesley, Reading, Mass, 1996) 中に再録]、同年の講演 "The computing machines in the future" (Nishina Memorial Lecture, Nishina Foundation and Gakushuin)、1986年の論文 "Quantum Mechanical Computers" (Foundation of Physics, Vol. 16, pp. 507–531) などによるものだと思います。

 1985 年の講演は、ファインマンが湯川博士の中間子論 50 周年記念シンポジウムに司会者の一人として来日した折のもので、当時、量子電磁力学・素粒子論物理学者としてのファインマンしか知らなかった私は、その変わった講演題名を不思議がっていたのでした。

 ファインマンには分子生物学についての論文もあるかどうか、私は不勉強で知りませんが、James Gleick によるファインマンの伝記 "Genius" (Pantheon, New York, 1992) 中には、J・ワトソンから、のちに "The Double Helix" という題で彼が出版した本の原稿(仮題 "Honest Jim")を手渡され、読んで感動し、感想を書いて渡したことが記されています。したがって、ファインマンは、ワトソンから分子生物学について意見を聞かれたりもする関係にあったかと想像されます。

 いずれにしても、ファインマンは、ノーベル物理学賞の対象となった量子電磁力学の研究を始め、素粒子論や物性論の研究、ナノテクノロジーの予見、量子コンピュ-タ-の提唱等々、幅広い活躍をした天才でした。

 Ted




 後日の注記:上記の返事を書いたときには、"Genius" の p. 386 を拾い読みしたのだったが、その後、同書 pp. 347–351 に "From QED to Genetics" と題する節があり、ここにファインマンの分子生物学への寄与が記されていることを知った。これについては、いずれ紹介することにしたい。

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