2018年10月25日木曜日

「おぼつかない」は一語の形容詞 (About the Japanese word "obotsukanai")

[The main text of this post is in Japanese only.]


わが家の庭に咲いたシュウメイギクの花。2018 年 10 月 22 日撮影。
Flowers of Japanese anemone which bloomed in our garden; taken on October 22, 2018.

「おぼつかない」は一語の形容詞

 2018 年 10 月 25 日、NHK BS プレミアムの午前 7 時 10 分から 5 分間の番組、『もういちど、日本』は、兵庫県淡路島において雨の少ない島の暮らしを 1500 年あまり支えてきた「ため池」を取り上げていた。毎年 10 月に、東浦地区で、池の水を抜き、泥をさらう「かいぼり」と呼ばれる作業が行われるという。その放映の中で、男性のアナウンサーが、ため池の中で作業する人の姿を「足元がおぼつきません」と形容していた。「おぼつきません」というのは、文法上の間違いである。同様な間違いをかつて朝日新聞の見出しにも見た。何かが「おぼつかぬ」とあった。NHK のアナウンサーや朝日新聞の記者たるものが、なんという間違いをするものかと思った。

 「おぼつかない」で一つの形容詞なのであって、これは動詞「おぼつく」の未然形に否定の助動詞「ない」がついたものではない。漢字混じりでは「覚束ない」と記されることから分かる。インターネット上の『語源由来辞典』「おぼつかない」の項を見ると、もっと詳しい説明がある。以下に、そこから引用しておく。まさに、上記の間違いが、間違いの例として挙げられている。
 おぼつかないの「おぼ」は、「おぼろげ(朧げ)」の「おぼ」と同じ語幹で「はっきりしないさま」を示す。「つか」は「ふつつか(不束)」の「つか」などと同じ接尾語。「ない」は、形容詞をつくる接尾語。
 漢字は当て字で「覚束無い」と表記されるが、「おぼ」のみで「はっきりしないさま」を表しており、「ない」は「無い」とは別の語。
 動詞「おぼつく」と助動詞「ない」からなる語ではなく、一語の形容詞「おぼつかない」なので、「おぼつかぬ」「おぼつきません」「おぼつくまい」などというのは間違い。
 「おぼつかない」は、物事がはっきりしないさまの意味から、それに対して「気がかりだ」「待ち遠しい」といった、不安や不満などの感情も表すようになった。

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