2010年6月23日水曜日

2010年5月分記事へのエム・ワイ君の感想 (M.Y.'s Comments on May-2010 Articles; in Japanese only)

 M.Y. 君から "Ted's Coffeehouse 2" 2010年5月分への感想を6月20日づけで貰った。同君の了承を得て、ここに紹介する。青色の文字をクリックすると、言及されている記事が別ウインドウに開く。




1.「『ふと思い当たった』の謎」への答え (Abstract in Japanese)

 「先に、湯川が中間子論の形成においての重要な出来事について、半生の自伝『旅人』の中で、「十月初めのある晩、私はふと思いあたった」と記しているが[. . .]このたび、湯川の夫人、スミの書いた自伝的な本を読み、その中に、この謎に対する答えを見出した」との要約のもとに、本文は英文で書かれています。以下に本文の紹介をします。

 ——スミ夫人は次のように書いています。「[私たちがノーベル賞授賞式に臨むためストックホルムのホテルに到着したとき]、多数のジャーナリストが記者会見するため秀樹を待ち受けていました。質問の一つに、『日本人は畳に坐して勉強すると聞いているが、湯川博士、あなたは、畳に坐して論文を書いたのか、洋式の机の椅子に腰掛けて書いたのかどちらか』というのがありました。秀樹はしばし考えた後、『そのどちらでもありません。私は夜寝床で考えをまとめました』といいました。このことは事実であり、秀樹は、昭和9年、27歳の深更に幾夜も考え抜いた末に、ノーベル賞授賞論文を書きあげたのです。(注1)」澤野によって修正されて誤まった湯川自身の自伝が、英、仏、独語に翻訳されており、「十月初めのある晩、私はふと思いあたった」ということが世界中に流布されていることは、遺憾であり、上記の湯川スミの記述を広めなければならない。——(注2)

 注1(注2とともに Ted による):湯川スミの原文を私が英訳したものから、Y君が再度和訳したので、細かい表現では原文と異なる。しかし、かなり原文に近い。
 注2:「『ふと思い当たった』の謎」への答えについては、さらに改訂を準備中である。


2. ファインマン対レンブラント

 アメリカ物理学会のニュース5月号の1ページ目に「これは誰が描いたのでしょうか」と題し、婦人の肖像画が紹介されていて、5ページ目には「ファインマンはダイアグラムより多く絵をかいた」と機知に富んだタイトルで、4枚の絵と APS 会長の Callan 氏が写った1枚の写真が掲載されています。この肖像画はカルフォルニア工科大学の名高い物理学者ファインマンが1985年に描いたものであり、大学院時代を過ごしたプリンストン大学に Callan 氏の所有物として所蔵されていると述べられ、記事の最後に、専門家の意見では、彼の絵は少なくともレンブラントの物理学程度には上手である、と書いてあります。

 これについて、筆者は次のように論を展開しています。「これは、ほめたのか、けなしたのか、はっきりしない。ユーモラスにけなしているのだと思われる。念のため、レンブラントと物理学をキーワードにインターネット検索をすると、レンブラントらは錯覚を利用して明るさの相違を際立たせて描く方法を考え出したという話が出て来た。これは、かなりの物理学的センスも必要な技術と思われる。逆に、ファインマンの絵の巧みさの程度について、彼の物理学から推定が出来るだろうか。彼の有名な発明、ファインマン・ダイアグラムで彼の芸術的素質を検証できるであろうか。この発明から、少なくとも彼の思考方法は解析的であると同時に幾何学的でもあることが分かるが、上記の推定は難しいことであろう。」そして、「すっきりした考えがあればお聞きしたい」と結んでいます。

 5月の「今月の物理学者」に彼を選び、経歴、趣味の絵とその処遇を説明し、ファマインン・ダイアグラムを照準にし、レンブラントの物理学を引き合いに出して彼の絵のレベルを示唆した、米国物理学会のウィットに富んだ記事に感心しました。筆者の解説も大変興味深いものでした。

3. 山陰の旅

 4月に奥様と出かけられた山陰の旅についての6回シリーズは、第1日目が私の郷里倉吉市でしたので、懐かしく拝見しました。最近 NHK の昼の番組「ふるさと一番」で、写真にあった赤瓦五号館の中の座敷と南奥ある庭がガラス戸越しに写り、大変美しく保存されているのを見ました。あの街並みは高校時代の50数年前までは、生活の場として普通に居住されていました。過疎化の波に消え行くあの一帯を観光で町おこしをし、住み続けようとの意識の芽生えに感銘を受けました。「この3日間の旅行の間は、気温が低く小雨の時間帯もあった。しかし、それらは旅の妨げになるほどでもなく、かえって山陰のしっとりとした趣きを味わうのにふさわしい条件だったともいえよう」との結びの言葉の通り、この旅行記を楽しみました。

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