3月1日は太平洋・マーシャル諸島のビキニ環礁で米国が行った水爆実験によって、マグロ漁船第五福竜丸が被曝したビキニデーである。関連行事が2月27日から始まり、3月1日には日本原水協と原水禁国民会議が静岡市と焼津市で、それぞれ集会や墓前祭を開き、核兵器廃絶を訴えた [1]。このニュースがあまり報道されていないのは、まことに遺憾な状況である。
第五福竜丸が被曝したのは1954年のこと、今年は53回目のビキニデーだった。被曝から約半年後の9月23日、第五福竜丸の無線長だった久保山愛吉さんが急性放射能症で死亡した。
最近、毎日新聞のインタビュー記事「今、平和を語る」で、物理学者・小沼通二博士が核兵器問題について語り、湯川博士の核兵器廃絶運動に触れている [2]。それによれば、湯川博士は指導的な物理学者として日本での原爆研究に手を貸した(これについては [3] を参照されたい)という反省と自責の念があったところへ、アメリカが1954年3月に上記の水爆実験を行なったことで大きな衝撃を受けたそうだ。湯川博士は、それからは毅然として核廃絶を訴え、核兵器は「必要悪」ではなく「絶対悪」との立場を取り、核兵器を戦争や、どうかつ(恫喝)の手段にするのは、人類に対する最大の犯罪だと決めつけたのである。
小沼博士はまた、湯川博士を含むメンバーによって1955年に結成された「世界平和アピール7人委員会」が1967年に出した「核アレルギー・核の傘論を排除するアピール」は、博士が自ら読み上げたものだと述べ、そのアピールを次のように紹介している。
「最近、核の傘に覆われた世界という表現がしばしば使われるようになったが、そこには今後の人類は核の傘の下で暮らさねばならない、という宿命論的なあきらめさえ感じられる」とした上で、「傘は雨を防ぐためのものであるが、核の傘といわれるものは、それとは全く反対に人類の頭に火の雨を降らす源となるものである。それどころか核の傘自身がどんどん巨大化しつつある怪物で、このまま成長してゆけば結局人類を呑みつくしてしまうであろう」と断じている。明快ではないか、と。
- 27日からビキニデー関連集会, goo ニュース (中国新聞) (2007年2月26日).
- 今、平和を語る:物理学者・小沼通二さん/上 核兵器は「絶対悪」, 毎日新聞 (2007年1月31日).
- 湯川博士と源氏物語, Ted's Coffeehouse (2007年2月8日).
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