2014年7月27日日曜日

T・K 君へ:パスカルの三角形の拡張のことなど (To T. K.: On the Extension of Pascal's triangle, etc.)

[The main text of this post is in Japanese only.]


わが家の庭に咲いたハマユウの花。2014年7月19日撮影。
Spider lily in my yard, July 19, 2014.

T・K 君へ:パスカルの三角形の拡張のことなど

2014年5月26日

T・K 君

前略

 早速手書きのお返事をいただき、嬉しく拝読しました。

 毎日新聞の記事について、「コメント出来る立場ではありません」とありますが、鏡像問題は「立場」などに関係なく、迷答・珍答でも聞かせて貰えばよい問題です。

 私の結婚披露宴での祝辞を「再登場させ」るとありましたが、実際に聞かせて貰ったのは、これとはかなり異なっていました。その文面は当日貰って、わが家のアルバムに貼付してあります。奥様の手で清書されたもので、今回の文よりは、かなり真面目なものに修正されています。今回のものは恐らく初案で、読み上げられたのは、奥様が大幅に添削されたものだったのでしょう(わが家へお越しの機会があれば、ご覧に入れます。あるいは、またの機会に写真に撮って送ってもよいです)。

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 同封して貰った「数学を楽しむ:生徒とともに AHA 体験を」の一文は、なかなか立派な内容だと思います。先生方の研究会ででも発表されたのですか。文章表現については、指摘したい点が幾つかありますが、主なものは二つです。その一つは、「です」調と「である」調が混在していますが、どちらかに統一していたらよかったということです。もう一つは、貴君自身も文の初めに書いている通り、「試行錯誤過程の生々しさ」が表現出来ていないことです。

 例えば、「生徒 A がこれこれの試みをしたが、うまく行かなかった。私がこれこれのヒントを与えると、生徒 B がそれに沿った試みをして見通しが開けた」など、失敗も含めた過程を少し詳しく書けば、生々しさがいくらかでも伝わったかと思います(字数の制限があったのでしょうか)。

 後日、図書館の倉庫に眠っていた R. Fricke の “Lehrbuch der Algebra”(書名の最後の単語に不要な文字が一つありますよ)中に多項係数の関係式を見出したという話がつけ加えられているのが、高級感のある締めくくりになっていると思います。

 三項展開へのパスカルの三角形の拡張は、いつ頃から知られていたのだろうかと思い、インターネット検索をしてみました。歴史については分りませんでしたが、貴君の文中の図1に相当するものには、「パスカルのピラミッド」または「パスカルの四面体」の名で呼ばれていることを知りました(注 1)。ということは、パスカル自身が拡張していたのでしょうか。

 また、加藤一郎という人のウェブサイト(注 2)に、彼が高校生の頃、パスカルの三角形の拡張を考えたという話が書いてあるのを見つけました。加藤氏は貴君の生徒の一人かと思いましたが、彼は自分一人で考えたように書いています。同じことを高校時代に考えた人が貴君の生徒たち以外にもいたようです。

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 ところで、私は高 1 のとき、二項展開の係数がパスカルの三角形で求まるということを、その名を知らないままに、M 君が持っていた解析 I の問題集のようなもので知り、その方法を解析 I の時間に隣の席にいた T 君に話しました。その頃、ヨウコ先生が休まれた日があり、K 先生が代理で来て、私たち一同に何か質問がないかと尋ねられました。すると、T 君が、先生を困らせようと思ってでしょうか、(a+b) の 10 乗を展開するとどうなりますかと質問しました。K 先生はもちろんパスカルの三角形をご存じで、記号 C を使った二項係数の性質までも説明して下さいました。貴君はこの出来事を覚えていませんか。

 私が生徒の頃に楽しんだ数学の問題の一つは、中 3 のときに M 君から出題されたもので、正三角形の一辺を n 等分した長さを一辺とする正三角形を、もとの正三角形の中にぎっしり埋め込んだとき、いろいろな大きさの正三角形が全部で幾つあるか、というものでした(このような文でなく、図での出題でしたが)。M 君も答を知らなくて、二人で放課後などに黒板にいろいろな式を書き合っていましたが、コンパクトな形の正解にはたどりつけませんでした(なぜか、n が偶数と奇数の場合に分けて、それぞれに 2 組ばかりの数列を与え、その和を計算すればよいとして、出来たつもりでいました)。

 ただ、そのとき、研究する喜びとはこういうものだろうかという思いをしたことをいまでも覚えています。高 1 で習った解析 I の教科書に同じ問題があって、たしか、自然数の和とその二乗和の、習った公式を使えば、容易に奇麗な答が出たのでしたが。

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 貴君が数学などについて他にも書かれたものがありましたら、また読ませて下さい。私のこの手紙には、昨年『日本物理学会誌』の「会員の声」欄に投稿して、10 月号に掲載された文の原稿を同封します。ご笑覧の上、「コメント出来る立場ではありません」などといわないで、率直なご感想を聞かせて貰えれば幸いです。

 長い手紙になり、失礼しました。

草々

T・T

  1. "Pascal's pyramid," http://en.wikipedia.org/wiki/Pascal's_pyramid (last modified on 16 July 2014).
  2. 加藤一郎,「パスカルの三角形拡張」, http://www1.c3-net.ne.jp/kato/pascal/index.html (2002).

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