2007年1月8日月曜日

「補習」会

 「湯川秀樹を研究する市民の会」が昨1月7日に持った「補習」会の熱心さは、私がけさ同会のメーリングリスト・メンバー宛に送った下記のメールで想像して貰えるだろう。



 皆さん、お早うございます。

 昨日は「補習」お疲れさまでした。

 「補習」の中で、(12) 式*中のm_U(_U は、U が下付きという意味)は、m_U の2乗でなければならないとの鋭いご指摘がありました。私は (14) 式の後に書かれている説明が、いまだに腑に落ちないので、その辺りについて何か分からないかと思って、いま Brown & Rechenberg 著 "The Origin of the Concept of Nuclear Forces" を見ていました。すると、(12) 式とその後の数行が原文のまま引用されていて、ちょっと驚きましたが、その前後の湯川の手書き原稿も掲載されていて、そこでは m_U にちゃんと2乗がついていました。したがって、2乗が抜けたのは出版社の誤植と分かります。**

 (14) 式の後に書かれている説明で私が腑に落ちないのは、昨日、C^12(^ は上付きの意味)の束縛エネルギーに相当するエネルギーが、1個の陽子の核内での運動エネルギーに変わっているという話になった点です。C^12 が他の原子核から何らかの反応で生成されるとき、束縛エネルギーにかかわる反応前後の原子核の静止エネルギーの差(質量差)は、C^12 を含む反応生成物の運動エネルギーとして放出されてしまっているはずです。そうだとすると、昨日の議論は成り立たず、湯川の書いている「原子核における陽子の束縛エネルギーが m_U c^2 と同程度ならば…」という説明が、依然として理解できないことになります。

 なお、昨日、(7) 式から (8) 式への移行の際に、p^2 のかかるDの1次の項が無視され、τ_3 のかかるDの1次の項が残されているのは不思議、ということになりました。これは、p^2 のかかる項同士の比較では、Dの1次の項は0次の項より明らかに小さいが、τ_3 のかかるDの1次の項が他の項と比べてどうかは必ずしも明瞭でない、ということで理解出来るのではないでしょうか。

 T.T.

 * いわゆる中間子論第1論文[H. Yukawa, "On the interaction of elementary particles. I." Proc. Phys.-Math. Soc. Japan Vol. 17, pp. 48-57 (1935) ]中の式。
 **『湯川秀樹自選集2 素粒子の謎』に掲載の片山泰久訳「素粒子の相互作用について I」では、この式は正しい形で示されている。

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