けさの朝日紙「天声人語」欄 [1] は、「与党が敵(かたき)を討たれた長崎知事選」を扱っている。その初めにある「『江戸の敵を長崎で討つ』 の例え」の説明中、気になるところがあったので、ツィッターで指摘した [2]。ここにその詳細な説明を記す。まず、冒頭から問題の部分までを引用する。
「江戸の敵(かたき)を長崎で討つ」の例えは、本来は「長崎が討つ」だという説がある。江戸での見せ物興行で大阪の竹細工が大評判を呼び、地元勢は面目をつぶされる。ところが長崎からのガラス細工がさらなる人気を博し、江戸の職人たちも留飲を下げた、との由来である▼外国に開かれた長崎は先取の地でもあった。「長崎で討つ」となるとその意味は消え、意外な場所や筋違いのことで恨みを晴らす例えとなる。
「天声人語」が引用している「本来の意味の一説」を表すには、確かに「長崎が討つ」が分かりやすいかも知れない。しかし、「長崎で討つ」の表現でも、助詞「で」を、長崎からのガラス細工がさらなる人気を博した「ことによって」という、手段を表す意味に取れば、「その説の意味が消える」ことにはならない。
ただ、「長崎」が地名であるだけに、「長崎で討つ」という簡略化された表現では、「で」を手段を示す助詞と取ることが困難で、場所を示すものと思いがちであることは否めない。
他方、紹介されている説を意味させる場合でも、「長崎が討つ」といえば、「が」が主語を導く助詞であるだけに、「長崎」が、主語になりやすい「長崎の人」を思わせてしまい、重要なのは「長崎からのガラス細工」という「物」であることが分かりにくくなる欠点がある。
このように、日本語の助詞の使い方や解釈は、なかなかむずかしい。
文献
天声人語, 朝日新聞 (2010年2月23日).
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