2011年2月23日水曜日

「うがった」の用法 (The Use of the Japanese Word "Ugatta")

Abstract: In the Wednesday issue of the Asahi Shimbun, I have found that the Japanese word "ugatta" is used to mean "wrong," and regard this as erroneous. The correct use of the word is discussed by quoting explanations from three dictionaries.

 きょう、2月23日付け朝日新聞の金融情報面「経済気象台」欄に次のような文があった。

[…]イギリス病と同様、日本病は二大政党制にも責任ありといえるのではないか。
 でも、それはうがった評価だろう。このところの日本では[…]。[…]過去のイギリスのような、ある意味で高いレベルの対立とは全く次元を異にする。

ここでは、「うがった評価」という言葉が「核心を見ない間違った評価」というような、否定的な意味で使われている。続くパラグラフが、前のパラグラフの内容に対する異論であることから、そう判断される。

 しかし、辞書を見ると「うがつ」には、ここで使われているニュアンスでの否定的な意味は見当たらない。『大辞泉』(増補・新装版、1998)には、

人情の機微に巧みに触れる、物事の本質をうまく的確に言い表す。「うがった見方」「彼の指摘は真相をうがっている」

とあり、『新明解国語辞典』(第4版、1997)には、

人情の機微や事の真相などを的確に指摘する。「穿った事を言う」

とある。どちらも、推察が正しい方向であることを意味する肯定的な使い方を例示している。『広辞苑』(私の持っているのは少し古く、第3版、1983 であるが、インターネット上にある引用から、第5版でも同じ説明が採用されていることを確認した)には、

せんさくする。普通には知られていない所をあばく。微妙な点を言い表わす。浮世床「人情のありさまをくはしくうがちて」。「うがったことを言う」

とある。「せんさく」や「あばく」には、行為としてよくない面(否定的な面)があるが、うがった結果として得た内容が間違っていることを意味するというような説明は、ここにもない。したがって、「経済気象台」欄の「うがった」の使い方は間違いといえよう。

 「経済気象台」欄の執筆者は「第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者」とのことだが、このような誤用には新聞社の編集部にも責任があるだろう。

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