2005年6月11日土曜日

Single Gene Changes Sex Orientation of Fruit Flies (単一の遺伝子がミバエの生本能を転換)



 写真はわが家の植木鉢に咲いたユリの花(2005年6月8日)。

 【概要】オーストリアの研究者たちが6月3日発行のCell 誌に、オスのミバエがメスに対して示す複雑な求愛の動作を、ただ一つの遺伝子の操作によってメスに起こさせ得たことを発表した。これは、人間の本能的な振舞いの理解への重要な一歩となるかも知れない。

Barry Dickson and colleagues at the Institute of Molecular Biotechnology in Vienna, Austria, published a pair of papers in the 3 June issue of Cellto report on a first elegant demonstration that a single gene can serve as a switch for complex behavior [1, 2].

Miller [2] writes, "The male fruit fly is a winged Casanova. He pursues lady flies with a repertoire of song, dance, and well-placed licks that many find impossible to resist." Female flies altered by the Austrian scientists to use a gene called fruitless (fru) to make proteins normally made by males pursued a waiting virgin female, showing all the components of that repertoire.

This could be an important step toward understanding instinctive human behavior.


  1. E. Rosenthal, For Fruit Flies, Gene Shift Tilts Sex Orientation, New York Times (June 3, 2005).
  2. G. Miller, Spliced Gene Determines Objects of Flies' Desire, Science Vol. 308, p. 1392 (2005).
[The above English text is also given at the "IDEA & ISAAC: Femto-Essays" site.]

 
[以下、最初の掲載サイトでのコメント欄から転記]

Y 06/11/2005
 私の分野に出てくるのですが、「振舞い」は他者を意識した装いが含意された行動、であろうかと思います。このハエの動作は本当に「振舞い」のレベルの本能的行動ですよね。人間において、本能的な行動が一遺伝子によって起こるだけでなく、異性などの他を意識した「振舞い」も生得的になしうることがもし解明されれば、それこそジェンダー・アイデンティティの問題への視座も新たなものが得られるかもしれませんね。

Ted 06/12/2005
 ヒトはミバエほど単純ではないでしょうが、それでも最近は、ヒトの遺伝子と動物のそれが大差ないということも見出されつつあるようです。

テディ 06/12/2005
 私などは全くの門外漢ですが、いわゆる「性同一性障害」にも関連してくるのでしょうか?

Y 06/12/2005
 性同一性障害が一遺伝子に起因する、といったような仮説はすでに出ているようです。
ただし性同一性障害といっても広範で、文化的な性、ジェンダーの方の問題にどれだけ傾いているか否か、ということで形相面はがらりと変わります。生得的な性に対する障害の方が遺伝子関与の可能性が高いであろうことは、自然に考えられますよね。