2011年7月20日水曜日

湯川博士が詩に託した原子力への思い (Hideki Yukawa's Thought on Nuclear Power in His Poem)

Abstract: Hideki Yukawa wrote a long poem entitled "Atoms and Human Being" in his book of the same title published in 1948. The poem describes the existence of atoms long before humans' birth, mankind's learning of atoms, his finding of its divisibility into electrons and nuclei, and his obtaining of atomic energy (nuclear power). Then, the poem gives the warning about the danger of atomic energy by comparing it with fire. The disasters at Fukushima Daiichi nuclear plant came as the result of neglecting his warning. (The main text is given in Japanese only.)

 私が先に書いたブログ記事シリーズ「原発計画に関する湯川博士の言葉」[1] について、「湯川秀樹を研究する市民の会」のメンバー宛グループメールで知らせておいたところ、このほどメンバーの一人 Y・D さんから、湯川秀樹が原子力について書いた詩を紹介する返信が届いた。高木仁三郎著『原子力神話からの解放』[2] の中で、湯川が原子力への思いを「原子と人間」という詩に託したことが述べられているとのことである。その長い詩の全文はインターネットで見ることが出来る、とあったので早速検索すると、『点をつなぐ』というブログの一記事に引用されていた [3]。詩「原子と人間」は、同題名の湯川の著書 [4] に掲載されたものという。

 その詩は、人間の誕生以前から原子のあったことから語り始め、人間が原子を知り、それが電子と原子核に分割できるできることを知り、原子核も破壊されることを知り、原子力を手に入れるにいたったことを述べる。そして、次の忠告的な一節が来る。

人間は遂に原子を征服したのか
いやいやまだ安心はできない
人間が「火」を見つけだしたのは遠い遠い昔である
人間は火をあらゆる方向に駆使してきた
しかし火の危険性は今日でもまだ残っている
火の用心は大切だ
放火犯人が一人もないとはいえない
原子の力はもっと大きい
原子はもっと危険なものだ
原子を征服できたと安心してはならない
人間同志の和解が大切だ
人間自身の向上が必要だ

原子の火の「火の用心」を忘れた結果が、福島第一原発の過酷事故である。


  1. 原発計画に関する湯川博士の言葉 1, 同 2, 同 3, Blog "Ted's Coffeehouse" (2010).

  2. 高木仁三郎, 原子力神話からの解放:日本を滅ぼす九つの呪縛 (講談社プラスアルファ文庫, 2011).

  3. 高橋誠, 日本人初のノーベル賞受賞者、湯川秀樹さんが昭和23年に書いた詩文「原子と人間」, ブログ『点をつなぐ』

  4. 湯川秀樹, 原子と人間 (甲文社, 1948).

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