わが家の庭のハマユウ。2013 年 8 月 20 日、二階の窓から撮影。
Flowers of grand crinum lily in my yard. Taken from the window of the second floor
on August 20, 2013.
以下は、ブログ『平和の浜辺:福泉・鳳地域「憲法9条の会」』に 8 月 21 日付けで、「見出しの不適切が真意を損ねる:朝日紙のキャロル・グラックさんインタビュー記事」の題で掲載した記事に手を加えて転載するものである。
朝日紙の不適切な中見出し
2013年8月20日付け朝日紙「オピニオン」欄に「安倍政権と戦争の記憶」と題して、キャロル・グラックさんへのインタビュー記事が掲載されていた。キャロル・グラックさんは、米コロンビア大学教授で、同大学東アジア研究所に所属し、米国における日本近現代史、思想史研究の第一人者である。
印刷版のこの記事には大きな活字で、中見出しが二つあり、それぞれ 3 行におよんでいる(インターネット版には、中見出しがない)。最初の一つは次の通りである。
これは、「参院選でも大勝した安倍政権について、米メディアでも右傾化を懸念する意見が見受けられますが」というインタビューアーの問いかけに答えたものなので、グラックさんの「海外メディアの報道は極端」という言葉の中の「報道」には、「右傾化報道」も含まれてはいるだろう。しかし、中見出しには、どこの報道かが表現されていないので、まず、一つの誤解のもとになる。さらに、次のような意味でも、誤解に導く見出しといわなければならない。
「日本の政治は以前から右傾化している」
グラックさんはこのあと、「憲法改正を目指すことは、自民党政権として別に新しいことではありません」とか「[『戦後レジームからの脱却』ということと]同種のことを言い始めたのも、別に安倍首相が最初ではありません」と発言している。これを考えれば、グラックさんは日本の政治が以前から右傾化していることを認めていて、「参院選でも大勝した」結果、「急に右傾化した」と見るのが極端で浅い見方だと指摘していることになる。
右傾化の道を長年進めば、極右ないしは極々右状態にたどりつく。その時点で人々が驚き、あわてても間に合わない。日本のメディアは安倍政権の右傾路線を大いに批判すべきである。
「米国は日本の記憶とシステムを『冷凍』していた」
上記の中見出し 2 行目の「米国が支えた戦後」にも問題がある。この表現では、グラックさんは「米国は日本に対してよいことをしてきた」といったように取れるが、記事中で中見出しのこの部分に相当するグラックさんの言葉には「支えた」という言葉はなく、「[戦後]米国が、日本の記憶とシステムを『冷凍』していた」といっている。これは、むしろ、悪影響を及ぼしてきたといっていると取るべき表現である。
中見出しの 3 行目は、意味としては 2 行目から続いていて、2 行を合わせて、安倍首相のいう「戦後レジームからの脱却」は本意かということを表している。これは、グラックさんの「安倍首相は『普通の国』になるために9条を変えることを欲するけれど、戦後体制の『ある部分』は変えたくない。それは日米関係です。[…]安倍首相は、本当に戦後を変えたいのでしょうか」という発言を伝えるものである。グラックさんの指摘がなくても、「戦後レジームからの脱却」という言葉の矛盾は明らかである。
「加害責任否定は『地政学的無神経』」
二番目の中見出しは次の通りである。
「ヘイト・ナショナリズムは安倍首相よりも危険」
「日本は他国がしない隙間の役割を」
グラックさんは、「在日コリアンへの悪意に満ちたデモなど、ヘイト・ナショナリズムには懸念を持っています。これは安倍首相よりもはるかに危険です」という発言もしている。さらに、日本は「非核国で、兵器も売らず、かつ世界有数の経済大国という稀有な国」という特徴を生かして、「他国がしない隙間の役割を見つけるべき」と説き、「それは、台頭する中国にどう対処するか、という問いへの答えでもあります。軍備に軍備で対抗するのは、ばかげていますから」と結んでいる。これらは、小見出しにでもして、ぜひ強調してほしかったところである。
2013年8月20日付け朝日紙「オピニオン」欄に「安倍政権と戦争の記憶」と題して、キャロル・グラックさんへのインタビュー記事が掲載されていた。キャロル・グラックさんは、米コロンビア大学教授で、同大学東アジア研究所に所属し、米国における日本近現代史、思想史研究の第一人者である。
印刷版のこの記事には大きな活字で、中見出しが二つあり、それぞれ 3 行におよんでいる(インターネット版には、中見出しがない)。最初の一つは次の通りである。
右傾化報道は極端この中見出しには問題がある。忙しい読者は見出しだけを見て内容を知ろうとするだろう。その場合、「右傾化報道は極端」とあれば、グラックさんは「日本のメディアが、安倍政権は右傾化していると報道しているのは極端です」と発言した、と捉えてしまうだろう。しかし、記事中のグラックさんの言葉は「日本に関する海外メディアの報道は極端で、しかも浅い」というものである。
米国が支えた戦後
「脱却」は本意か
これは、「参院選でも大勝した安倍政権について、米メディアでも右傾化を懸念する意見が見受けられますが」というインタビューアーの問いかけに答えたものなので、グラックさんの「海外メディアの報道は極端」という言葉の中の「報道」には、「右傾化報道」も含まれてはいるだろう。しかし、中見出しには、どこの報道かが表現されていないので、まず、一つの誤解のもとになる。さらに、次のような意味でも、誤解に導く見出しといわなければならない。
グラックさんはこのあと、「憲法改正を目指すことは、自民党政権として別に新しいことではありません」とか「[『戦後レジームからの脱却』ということと]同種のことを言い始めたのも、別に安倍首相が最初ではありません」と発言している。これを考えれば、グラックさんは日本の政治が以前から右傾化していることを認めていて、「参院選でも大勝した」結果、「急に右傾化した」と見るのが極端で浅い見方だと指摘していることになる。
右傾化の道を長年進めば、極右ないしは極々右状態にたどりつく。その時点で人々が驚き、あわてても間に合わない。日本のメディアは安倍政権の右傾路線を大いに批判すべきである。
上記の中見出し 2 行目の「米国が支えた戦後」にも問題がある。この表現では、グラックさんは「米国は日本に対してよいことをしてきた」といったように取れるが、記事中で中見出しのこの部分に相当するグラックさんの言葉には「支えた」という言葉はなく、「[戦後]米国が、日本の記憶とシステムを『冷凍』していた」といっている。これは、むしろ、悪影響を及ぼしてきたといっていると取るべき表現である。
中見出しの 3 行目は、意味としては 2 行目から続いていて、2 行を合わせて、安倍首相のいう「戦後レジームからの脱却」は本意かということを表している。これは、グラックさんの「安倍首相は『普通の国』になるために9条を変えることを欲するけれど、戦後体制の『ある部分』は変えたくない。それは日米関係です。[…]安倍首相は、本当に戦後を変えたいのでしょうか」という発言を伝えるものである。グラックさんの指摘がなくても、「戦後レジームからの脱却」という言葉の矛盾は明らかである。
二番目の中見出しは次の通りである。
過去の行為の謝罪この中見出しは、グラックさんの「それ[戦争の記憶に対処する『謝罪ポリティクス』]は世界的な『新しい常識』です。自民党が国内政治として扱おうとしても、それとは別種の国際環境が存在している」という発言からきていて、問題はない。これに先立って、グラックさんは「安倍首相を含む自民党の右派政治家たち」が「加害責任を否定することで、国内の支持をえようとして」きて、その姿勢がすぐに海外に流れることに気づいていないのは、「一種の『地政学的無神経』」と、強く批判している。
世界の新常識に
国内問題視は誤り
「日本は他国がしない隙間の役割を」
グラックさんは、「在日コリアンへの悪意に満ちたデモなど、ヘイト・ナショナリズムには懸念を持っています。これは安倍首相よりもはるかに危険です」という発言もしている。さらに、日本は「非核国で、兵器も売らず、かつ世界有数の経済大国という稀有な国」という特徴を生かして、「他国がしない隙間の役割を見つけるべき」と説き、「それは、台頭する中国にどう対処するか、という問いへの答えでもあります。軍備に軍備で対抗するのは、ばかげていますから」と結んでいる。これらは、小見出しにでもして、ぜひ強調してほしかったところである。
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