2014年8月16日土曜日

J・M 君へ:最近の読書のこと (To J. M: On My Recent Reading)

[The main text of this post is in Japanese only.]


今夏は平均気温が低いせいか、毎年 8 月終り頃に開花するタマスダレが、
わが家の庭で、もう花開いた。2014 年 8 月 15 日撮影。
The white rain lily, which bloom near the end of August each year, has blossomed already in my yard this summer, probably because the average temperature has been low.
The photo was taken on August 15, 2014.

J・M 君へ:最近の読書のこと

2014 年 8 月 3 日

M 君

 昨日のメールの続きとして、読書のことなどを書きます。

 貴君は聖書を精読しておられるとのことですが、私は聖書(和英とも)を持っていながら、ときおり部分的に眺めるだけです。

 春頃に、作家の高橋源一郎氏が金沢を紹介するテレビ番組に出ていて、井上靖の『北の海』に触れていました。その作品を読みたいと思ってアマゾン書店の紹介を見ると、主人公は柔道に一生懸命になる少年で、かなりの長編小説、そして、金沢が舞台になっているのはその一部分だけのようだったので、読むほどでもないかと思いました。ところが、4 月下旬のある日、娘たちが結婚するときに残して行った文庫本の中にその作品があるのを見つけて、2 週間ほどで読みました。

 『北の海』には、金沢が舞台の話が結構長く続いていました。柔道のことは皆目知らない私ですが、自分も異なる形でながら通りすぎた青春時代が、こと細かに描かれているせいか、退屈しないで読めました。『北の海』という題名は、主人公・洪作が四高柔道部の連中と金石から内灘までの海岸を歩きながら眺めた荒々しい日本海の風景から来ています。内灘には、私の従兄が住んでいるので、大学生時代から就職して間もない頃にかけて、よくそこに泊まって、海岸へ甲羅干しに出かけたものです。

 終盤に、主人公の洪作が中学の先生夫妻、友人たち、そして淡い気持を抱いたトンカツ料理屋の娘・れい子に見送られて、第四高等学校受験の勉強のため、両親の住む台湾へ向かって沼津を出発する場面があります。そこを読んだときには、私が就職して金沢を離れた日が思い合わされました。場所は違いますが、そのとき、何人も見送ってくれた人たちがいたからです。

 『北の海』より先に、『加藤周一最終講義』を買って読みました。続いて、18 年も前に買って第一巻の始めを少し読んだだけにしてあった『加藤周一講演集』(全二巻)を読みました。第一巻は政治の話が多かったですが、第二巻は日本の文学、美術、文化の話でした。それを読んでいると、彼の主著の一つ『日本文学史序説 上・下』を読みたくなって、購入しました。そして、7 年前に買って、これも少しだけしか読んでなかった、同じく加藤周一の『日本文化における時間と空間』を読了してから、『日本文学史序説 』に移り、目下それを読み続けています。文学を広い意味にとらえて書かれていて、文化・思想史ともいえる重厚な内容です。

 私が加藤周一の著作を好むようになったのは、彼が朝日紙に毎月一回書いていた評論を読み、その文体のよさに加えて、政治観にも大いに同感出来たところからです。残念ながら、2008 年に 89 歳で亡くなりましたが、現代の著作家の中では最も尊敬出来る人の一人と思っています。それでも、『日本文化における…』中の加藤氏の日本語文法解釈には、少しばかり異論を持ったので、それについてブログ記事を書きました。

 上記のような日本語の本の他に、英語で書かれた物理学関係の本も併読しています。いま読んでいるのは、Jim Baggott というサイエンスライターの "Farewell to Reality: How Modern Physics Has Betrayed the Search for Scientific Truth" です。Part I は "The Authorized Version" と題して、すでに正しいとされた物理学の説について解説してあります。かなり難しいことを易しい言葉で巧みに説明していることに感心するくらいで、私としては新しく知るところが少ないです。しかし、これから読む Part II は "The Grand Delusion" と題して、近年提唱されている諸理論の問題点を批判的な観点で紹介しているようで、面白そうだと思います。

 話変わって、わが家では先月 13、14 日に金沢へ墓参に行ってきました。梅雨明け前でしたが好天に恵まれ、長女も同伴したので、ついでに金沢市内の見物もしました(ブログ記事参照)。長町の武家屋敷跡へも行きましたが、高校時代にお邪魔したことのある貴君の家がどの辺りだったか、全く思い出せませんでした。次のメールででも地図で教えていただければ幸いです。

 ではまた。

 T・T

 (注:実際に送ったメールに対して、省略・追加などの編集を行なった。)

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