南部さんが、始めのふたつの粒子が消えて、新しいのが現れる場合も、やはりふたつの粒子の間の相互作用だといったのを受けて、ポリツァーさんは「ときにはひとつが入ってきて、みっつがでてくることもある」と発言している。南部さんは、「その通り。それも『力』と呼ばれる。ひとつの粒子がみっつに崩壊する場合です」と答える。これはまさにポリツァーさんが始めに述べた「弱い力」のことである。
C図は中性子(n)が陽子(p)と電子(e−)と反ニュートリノ(νの上に反粒子であることを示すバーがついている)に崩壊するファインマンダイアグラムで、弱い力による現象のひとつを表している。このときに負電荷のWボソンという媒介粒子が放出・吸収されるが、これも先のA図(前報参照)中の光子と同じく仮想粒子であり、現実には出てこない。それで、この崩壊はポリツァーさんのいう「ひとつが入ってきて、みっつがでてくること」に相当する。
力はふたつのものの間で働くと考えると、このような崩壊になぜ力がかかわっているのかと、学生時代のポリツァーさんのように理解に苦しむことになる。しかし、B図(前報参照)のところで、バーテックスから粒子が出て行くのは、反粒子が入ってくることと同じと考えた。ここでもその考えを適用すれば、C図の右側のバーテックスから出て行っている反ニュートリノは、そこへニュートリノ(ν)が入ってきていることと同等ということになる。そういう見方でC図を描き換えると、D図となる。これは、荷電粒子同士の斥力による散乱を表すファインマンダイアグラム A図と同じ形をしている。したがって、ポリツァーさんが最初にいっていたように、崩壊も「現代的な意味での力」ということになるのである。(A〜D図を描くにあたっては、文献 [1] を参考にした。)
(つづく)
- P. C. W. Davies, The Forces of Naure, 2nd ed. (Cambridge University Press, Cambridge, 1986; 1st ed. published in 1979).
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