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M・Y 君から "Ted's Coffeehouse 2" 2012 年 8 月分への感想を 2012 年 9 月 10 日付けで貰った。同君の了承を得て、ここに紹介する。
オランダ、ベルギー運河の船旅 1~53
「オランダ、ベルギー運河の船旅」は、
4 月 16 日の朝、船室から美しい日の出が見えた。クルーズの始まりにふさわしい光景である。地平線から少し浮き上がったところに長く横たわる黒雲とその下に帯状に見える空の明るい部分が、日の出前には、対岸の森と湖面の一部のように思われた。したがって、それらよりも手前のような位置から太陽が顔をのぞかせたのには驚いた。しかし、森と思ったものが実は黒雲と分かれば、なんの不思議もない光景である。[連載第 2 回]
と、写真を見なくても、風景が彷彿と思い浮かぶ名文で始まります。2009 年 11 月 12 日から旅した「古城渓谷と中世古都巡り:ライン河、マイン河の船旅」のいわば後編です。ライン河は下流でバール河となり、ロッテルダム付近で北海に注ぎますが、そのバール河とナイメーヘン港とで接点を持つオランダ・ベルギー運河を、同じ「セレナーデ II 号」で航行します。
航程は連載第 19 回の地図に示されています。船は以下の順に港を巡航して行きます。アムステルダム→ホールン(歴史的遺産の鉄道列車)→フォーレンダム(フォーレンダムの町)→アムステルダム(市内観光、国立美術館)→ロッテルダム(キューケンホフ花公園)→フリッシンゲン(ブルージュ市)→アントワープ(アントワープ市、ノートルダム大聖堂)→ドルドレヒト(キンデルダイク風車網)→ナイメーヘン(ゴッホの森、クレラー・ミュラー美術館)→ルールモント(フロリアード2012)→アムステルダム。
各港で、近くの街を散策したり汽車やバスで出かけて観光する旅の様子が、視点、構図、シャッターチャンがよく美しい多くの写真と、折にふれて描かれたスケッチを見ながら楽しむよう構成された紀行文となっています。名前を忘れてしまった建物や風景については、帰国後インターネットなどで確認され、意義深い項目については、関連ウエブサイトとのリンクが設定されており、客観的で、興味深い情報が得られます。「撮った写真をなるべく多く使いたいと思って書いているうちに、53 回の連載になった」という、筆者の情熱が感じられる労作です。
運河には、水位の異なる河川や運河の水路がいくつもあり、閘門によって運河網が構成されています。運河に浮かぶセレナーデ II 号の写真を見ると、運河の幅との相対的な関係が分かります。私の印象に残った風景は、運河に沿ったアムステルダムの家並[引用者注:リンク先の最後のの 2 枚か(同じ場所を複数回にわたって記述している場合には、代表的な写真の載っている回にリンクしています)]、筆者が運河沿いの建物の美しさに魅せられて、何枚も写真を撮ったという、昔の街路計画が維持され、歴史的な建物も古い形のままに保存されている美しいホールンの街や、1740 年頃、干拓地の排水用に 19 基作られ、世界遺産にも登録されているキンデルダイク・エルスハウト風車網、アムステルダムからスキポール空港に向かう途中で、企画外に挿入された観光地で、筆者がこの旅で最も気に入った場所の一つとなったという、歴史的な風車(木挽き、油製造、ペンキ製造用)と家々を集めてよく保存されていて野外博物館の感があるザーンセ・スカンスなどです。ウェブサイト "Zaanse Schans" によると、美しい生活と労働の場だということです。
また、ブルージュのマルクトに面して立つゴシック復古様式の州庁舎、ベルギー最古の市庁舎、典型的な北ヨーロッパルネッサンス建築であるアントワープ市庁舎、ビクトール・ユーゴが賛嘆し世界で最も美しい広場と見なされているグラン・プラスの南西に立つブリュッセル市庁舎など比較して見るのも興味深いです。アムステルダム国立美術館とクレラー・ミュラー美術館(アムステルダムのゴッホ美術館とならんで、2 大ゴッホ美術館といわれる)で撮影した絵画の掲載写真の中には、私も日本で見たものが多くあり、親近感を覚えました。
ノートルダム大聖堂に関しては、小学生の時に読んだ『フランダースの犬』が印象に残っており、当時の記憶をたどりながら、小説が書いている、ルーベンスが確固たる地位を築いて活躍した時代と、小説の中の大聖堂との関係を追認でき、感動しました。大聖堂も荘厳なアントワープのシンボルです。内部中央の「聖母の被昇天」の写真(筆者はフラッシュを使用してはいけなかったため、あまりよく撮れていないとコメントしていますが)に大いに関心を引かれましたので、クリックしましたら、英文ウイキペディアの鮮明な写真と詳しい説明がありました。
続いて「キリストの昇架」と「キリストの降架」も同様にウイキペディアの頁を見ました。絵に描かれている人物名や構図などについての詳しい説明がありました。お陰で、ルーベンスがこの 3 部作を、情熱を注いで描きあげた事情を想像することが出来ました。筆者はこれらの名作の実物をご覧になって感動されたことと拝察いたします。日本の協力で2003年に出来た『フランダースの犬』記念碑に書かれている言葉、「『フランダースの犬』この物語は悲しみの奥底から見出す事の出来る本当の希望と友情であり、永遠に語り継がれる私達の宝物なのです」は、その通りだと思いました。
キューケンホフの世界最大の花公園については、広大な花畑や園内風景、色々なチューリップに目を見張りました。今回はベルノで開催された10年に一度の花博「フロリアード 2012」は、会場のドームの中でオランダの多様で豊かな園芸と暮らしの関係を表現した3分間、360度のフィルムが上映されていること、「ヴィラ・フローラ(花の館)」が会期後は「オランダで最もグリーンなオフィス」となり、また、何年もの将来にわたってサステイナブルな建物の標準として役立つことになるなど、オランダが園芸にも国の将来を託す熱意が感じられました。
今回の旅は 2010 年 11 月に迎えた筆者ご夫妻の金婚を記念したものであり、その上、旅の途中で筆者は誕生日を迎えられ、「夕食のデザートの時間になる頃、"Happy birthday to you" の歌とともに、バースデイ・ケーキがテーブル運ばれてきた。船ではこのようにして乗客の誕生日を祝うのである。大勢の人たちに祝われて、まことに幸せな 77 歳の誕生日となった」と書いています。ご夫妻でお元気に素晴らしい旅を楽しまれたことと、ご同慶の至りです。
最近哲学者梅原猛氏と染織家の志村ふくみ氏の対談を雑誌で見ました (1)。梅原氏は「この前、瀬戸内寂聴さんと志村さんが反原発運動に参加されることを聞きました。寂聴さんはともかく、志村さんが参加されることに感動しました。…原発は廃止すべきで、自然エネルギーのようなクリーンエネルギーに変えるべきだと思います。でもこれは単なるエネルギーを変えるだけの問題でない。根本的な思想、哲学を変えなくてはいけない」と指摘していました。
この旅行で筆者が見られた運河網の利用、歴史的な建物も古い形のままに保存されている優雅な都市、干拓地の排水用に作られた風車網、歴史的な風車と家々を集めてよく保存されていて美しい生活と労働の場であるザーンセ・スカンス、花博「フロリアード2012」で示されたオランダの多様で豊かな園芸と暮らし、何年もの将来にわたってサステイナブルな建物の標準に役立つことになる「ヴィラ・フローラ(花の館)」、などの事実や歴史。これらは、現代の多消費、使い捨て生活、多くのきらびやかな文明の世から、人口と発展途上国のエネルギー需要が増加する将来の地球環境と、自然エネルギー下での持続社会の可能性の問題を考える場合に、顧みられるべきものと思いました。
(1)「新しい日本へ」(リレー対談「いのちの色」), 家庭画報 7月号 (2012年).
大聖堂---。
返信削除歴史的建造物を見るのが大好きですし、世界中の教会巡りをするのが夢なだけに、ますます行きたくなっちゃいますww
旅行記本文に続いて、この、友人からの感想文も読んで下さったのですね。ありがとうございます。
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