2018年11月20日火曜日

『1 日 1 ページ、読むだけで身につく世界の教養 365』を原書で読む:「論理学」のページ (The Intellectual Devotional: Page on "Logic")

[The main text of this post is in Japanese.]


『1 日 1 ページ、読むだけで身につく世界の教養 365』の原書。
The book The Intellectual Devotional.

 デイヴィッド・S・キダー、ノア・D・オッペンハイム・著、小林朋則・訳『1 日 1 ページ、読むだけで身につく世界の教養 365』(文響社、2018)がよく売れていると新聞で知り、その原書を買って読んでいる。原書の題名は、The Intellectual Devotional: Revive Your Mind, Complete Your Education, and Roam Confidently with the Cultured Class (Rodale, 2006) である。"Devotional" は「短い礼拝、簡単な祈祷」という意味で、"Intellectual Devotional" で、信心深い人たちが日々祈祷をするように、日々短い知識に触れるということを表しているようだ。曜日毎に次のように決められた 7 分野の知識を循環式に教えてくれる本である。月=歴史、火=文学、水=視覚芸術、木=科学、金=音楽、土=哲学、日=宗教。曜日や 1 日 1 ページということにこだわらないで読んでいるが、ほぼ 1 日 1 ページの割合で進んでいる。何について読んでも、わずか 1 ページの説明(細かい字で詰め込んではあるが)では、いろいろと疑問が起こる。しかし、それにより、読者が特に興味を持った事柄について、もっと調べてみるようにさせる、というのは、この本の一つの長所かもしれない。

 疑問が起こった例の一つとして、ここでは同書 62 ページの「論理学」(哲学分野)を取り上げる。私は大学教養課程で論理学の講義を選択する機会はあったが、それを選ばなかったので、論理学を学んだことがない。したがって、論理学を学んだ人たちには、つまらない疑問と思われるかもしれないが、その点はご了承願いたい。

 The Intellectual Devotional の「論理学」についての冒頭の説明を拙訳で記せば、次の通りである。
 論理学は形式的に妥当な論証についての学問である。論証は、前提あるいは仮定と呼ばれる複数の文と、結論を述べる一つの文からなる。一例を示すと、次の通りである。
 ソクラテスは人間である。
 もしもソクラテスが人間ならば、ソクラテスは死すべきものである。
 したがって、ソクラテスは死すべきものである。

 ここにある例は、三段論法の例として普通書かれている次の例とは別の形で、どこか奇妙に感じられる。
 全ての人間は死すべきものである。
 ソクラテスは人間である。
 ゆえにソクラテスは死すべきものである。

 上記の部分に続いて、The Intellectual Devotional の説明はフォントが小さくなり、3 行半の文があった後、次のように記されている。
同じ議論の様式的表現は、次の通りである。
 1. p
 2. もしも p ならば q
 3. 従って、q
p と q がどんな文でも、これは妥当な論証である。

 説明の最初にあった(訳を略した3 行半の文にもある)ように「形式的に妥当」という意味では、そうであるような気がする。しかし、q が事実に反するような文の時、それが形式的にしても「妥当」と呼ぶのは変なように思われ、「『本当に妥当』と呼びたい結論を出すには p と q がどんな文でもよいはずはなく、何か条件が必要なのではないか」という考えが浮かぶ。

 そこで、インターネットで調べると、上記の p、q で表された 3 段階からなる論証は「モーダスポネンス」(ラテン語: modus ponens、「肯定によって肯定する様式」の意)と呼ばれる「妥当で単純な論証様式」だと分かった。そして、論理学で「妥当な(valid)」論証というのは、あくまでも「形式的に」正しい推論ということで、q という結論が真である(事実あるいは現実と一致する)ことを保証するものではなく、結論が真であるためには前提 1、2 がどちらも真であることが必要なのである。この場合の論証(私が「本当に妥当」と呼びたいと思った論証)は「健全な(sound)」論証と呼ばれる。(ウィキペディアのモーダスポネンスのページなどを参照した。)

 モーダスポネンスの様式的表現で 1、2 は順を入れ替えてもよく、英文ウィキペディアのModus ponens のページには次の例(私たちが論理学などを意識することもなく、ごく普通に使っているような推論)が示してある。
If today is Tuesday, then John will go to work.
Today is Tuesday.
Therefore, John will go to work.
同ページのこの後には、modus ponens についてのさらに詳しい説明が 5 章にわたって続いている。論理学もなかなか奥深いものである。

 なお、ちょっとした疑問を図書館まで出かけなくても、居ながらにしてすぐに解決できる時代が来ようとは、私の若い頃には想像も出来なかったことである。

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