2018年11月4日日曜日

映画『ビブリア古書堂の事件帖』、そして感想は飛躍する (Film Memory of Antique Books and Thoughts with a Little Relevance)

[The main text of this post is in Japanese only.]


映画『ビブリア古書堂の事件帖』に登場するのと同じ新書版漱石全集の『それから』。
Sorekara in the same shinsho-size edition of Soseki 's Complete Works as appearing in the film Memory of Antique Books.

 昨日、三島有紀子監督の映画『ビブリア古書堂の事件帖』を近くのシネマ・コンプレックスへ見に行った。この映画を見たいと思った理由は、主役の一人・篠川栞子を黒木華が演じていて、ミステリとはいえ、本にまつわる話が中心の穏やかな内容らしく、また、私が持っているのと同じ新書版漱石全集の『それから』が登場する、などを新聞広告で知ったからだ。

 五浦大輔(野村周平が演じる)は、祖母・絹子(若い頃を夏帆、晩年を渡辺美佐子)の遺した『それから』(昭和 60 年代発行の新書版)にあった「夏目漱石」のサインが本物かどうかと、ビブリア古書堂の店主・栞子に尋ねる。同じ新書版を自分で買って持っている私から見れば、大輔がいかに体質的に本を読めないで育ったにしても、滑稽である。しかし、思えば私はその亡くなった祖母・絹子と同世代なのである。来年は元号が変わることでもあり、いまの若い人たちにとって昭和の時代は、私たちの世代が「実に古い明治時代」と思ってきたものに相当することになる。

 穏やかなストーリーを期待して行ったのだが、終わり近くに激しい格闘のシーンがあった。もう一つ気になったのは、大庭葉蔵と名乗る男が栞子から奪い取ろうとする太宰治の『晩年』の一冊と、彼が本当に欲しかった同じ本の一冊との異同が分かりにくかったことだ。三上延の原作を紹介したウィキペディアのページを見ると、この映画は主に原作の 1 巻第一話と第四話をもとにしているが、6 巻も関連していると分かる(6 巻についての紹介はまだ記されていないが、登場人物「笠井菊哉/田中敏雄」の説明から部分的に理解できる。なお、原作のオフィシャルサイトはこちら)。映画では 6 巻の話を簡略化して 1 巻の話と合わせてしまったことが、分かりにくくなった原因ではないだろうか。

 ちなみに俳優・野村周平は、NHK の連続テレビ小説『梅ちゃん先生』(2012 年)に佐藤光男(青森からの集団就職で安岡製作所に雇われた「中卒金の卵」の少年)役で出ていた。光男の特徴的な返事「はいー」を、私はいまでも妻への返事におどけて使ったりしている。

 また、絹子と「知られてはいけない恋」に落ちた小説家志望の田中嘉雄を演じる東出昌大も、邦画をあまり鑑賞しない私にとっても連続テレビ小説『ごちそうさん』(2013–2014年)でおなじみの俳優である。彼は昨日から東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA でプレビュー公演の始まった舞台劇、三島由紀夫原作『豊饒の海』に主演しているとのことである(ウィキペディア「東出昌大」)。

 『豊饒の海』全 4 巻の各巻がそれぞれに舞台化や映画化されたことはウィキペディアの「豊饒の海」にあるが、4 巻を通じての題名がつけられた舞台化とはどういうものだろうかと思い、その舞台劇のオフィシャルサイトを見た。そこには、「四冊からなる大河小説を一舞台作品として創作する史上初の試み! 三島由紀夫の『美』の象徴とも言うべき松枝清顕役に、東出昌大が出演。3 年ぶり 2 作目の舞台出演を果たす!」、演出は「ロンドンのオールドヴィック・シアターのアソシエイト・ディレクターで、ロンドンのネクストジェネレーションのトップを走るマックス・ウェブスター」などと書いてある。松枝清顕は第一部で夭折してしまう。後の部でその転生として登場する 3 人は誰が演じるのかと思うと、宮沢氷魚、上杉柊平ら、それぞれ次世代を担う若手俳優が抜擢されている旨の記述がある。東出は転生した身までは演じないのである。

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