2004年11月9日火曜日

『ジェーン・エア』と私

 SNS エコーの「小説好きの方、来てね」というグループの掲示板に、Y さんの「私の一番好きな恋愛小説(近代文学だよ)」という投稿があった。私は、そこへ返信投稿をしたが、同じ内容の文に大幅な捕捉をしたものを以下に掲載する。



 Y さんの一番好きな恋愛小説がシャーロット・ブロンテの『ジェーン・エア』と知って、嬉しい。これは私が中学 1 年生のときに読んだ最初の本格的な文学作品である。それまでに、子ども向けに翻案された文学作品はいくつか読んでいたかも知れないが。

 富山県の宇波という漁村(いまは氷見市の一部となっている)に住んでいた伯母の家へ夏休みに遊びに行き、そこにしばらく滞在した折に、従姉が持っていたのを借りて読んだのだった。今年の夏、それ以来初めて、その従姉に会い、この思い出についても話したばかりである。

 ロチェスター家に謎の人物が隠れ住んでいるらしいところを不気味に思いながらも、ぐいぐい引き込まれるようにして一気に読んだ。読後すぐに題名も著者名も忘れてしまっていたが、比較的すぐに、それがシャーロット・ブロンテの『ジェーン・エア』だったことを知ったと思う。

 また、『ジェーン・エア』は、郷里の大学の英文科の学生だった、中学同期の女性の友人が、卒論の対象とした作品でもあった。彼女は当然原書で読んだのだろうが、私は、その機会に岩波文庫版で再読した。ジェーンを彼女に、ロチェスター氏を私自身にみたてながらだっただろうか。冬休みに彼女に会い、「『ジェーン・エア』を読んだよ」といったのだが、なぜか、とくに感想を話し合うことはしなかった。

 今年の春頃、NHK ラジオ第 2 放送の「原書で読む世界の名作」で、『ジェーン・エア』が取り上げられていた。テキストのペンギン短縮版を買って、ときどき聞いていたが、いまそのテキストをどこへしまい込んだか思い出せない。思えば『ジェーン・エア』とは、長いつき合いである。

 ここで、上記の従姉のことを、少し述べておきたい。彼女、S 子は私より 4 歳年長で、当時、旧制富山女子師範から富山大学教育学部に編入学したばかりの、体操の部活動などもしている、すてきなお姉さんだった。夏休みの滞在を終えて帰途のバスに乗るとき、次はいつ会えるだろうかと思い、ふっと寂しさを感じたのだった。

 S 子は何年か前に小学校の先生を定年退職した。この夏訪問したとき、彼女は、退職後、富山新聞の「ときどきの日記」欄(朝日新聞の「ひととき」欄に相当)にしばしば投稿しているといって、掲載された随筆の切り抜き集を見せてくれた。そこに彼女の、昔通り文学好きの、すてきなお姉さんぶりを再び見ることが出来たのも嬉しかった。

コメント(最初の掲載サイトから転載)
Y 11/10/2004 21:32
 転載・加筆、ありがとうございます。なんだか、どきどきしながら、読みました。タイトルを見て、もちろんすぐに読みに来たかったのですが、とにかく生活もままならない悪体調なもので…。
 私の一番好きな恋愛小説『ジェーン・エア』に、Ted さんの人生の大切な人との関係が組み込まれているのですね。それは、私としても嬉しいことです。
 『ジェーン・エア』は長い小説ですが、絶対に素晴らしいと思える恋愛小説ですよね。
 これまでの人生で、私にとってのロチェスター氏は現れませんでしたし、私自身も何人の人とお付き合いしても、ジェーンがロチェスター氏としたような恋愛には恵まれませんでした。Ted さんは、あのジェーンとロチェスター氏を感じさせるような大切な人との関係があったのですから、それはとてもうらやましい、素敵なことですね。
 けれど、私は、『ジェーン・エア』が最愛の恋愛小説であるままで、だけどもそこからすっかり遠いところで、思いがけない恋愛…恋愛とも思ってないのですけど…愛の体験ばかりしているこの人生なので、もうきっと、小説とつながりさえもてないのだと思います。その実体験の端々は、私のブログにも出てきますよね。
 Ted さんがこのエコログで書かれているように、長い年数たって、また大切な人とのすてきな再会があり、人生を改めて懐かしく振り返ることができるなら、本当に、しみじみと人生の「まわりまわる」ような不思議な性質を実感できますよね。よいお話を、ありがとう。

Ted 11/11/2004 08:48
 Y さん、長文のコメントをありがとう。

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