2009年6月22日月曜日

『アラバマ物語』(To Kill a Mockingbird: film)

  さる6月19日の午後、NHK TV の BS2 チャネルで1962年のアメリカ映画『アラバマ物語』(原題 "To Kill a Mockingbird")を見た。見始めて驚いたことが二つあった。

 一つは、私はこの映画をこれまで見たことがなかったのに、幼いヒロインであるスカウトを演じたメアリー・バダムの顔を知っていたことである。それは、映画館の看板の記憶かと思ったが、雑誌『暮らしの手帳』に「アラバマ物語」が映画の場面の写真も入れながら連載されていたと知って、謎が解けた。『暮らしの手帳』はわが家でも以前購読していたのである(私は「アラバマ物語」を読んではいなかったが)。ただし、連載記事の写真の記憶に映画館の看板の記憶も重なっていたかと思う。

 もう一つは、原題をベストセラー本の題名として、『アラバマ物語』の原作とは知らないままに、知っていたことである。これは私が購読しているイギリスの図書紹介誌 "The Good Book Guide" のお陰かと思う。原作 [1] は、1961年にハーパー・リーによって書かれた小説で、ピューリッツァー賞を受賞しており、また、作者は2007年に、アメリカの文民向けの最高位の勲章 Presidential Medal of Freedom(大統領自由勲章)を受けている。

 Mockingbird は、それが会話で登場する場面の日本語字幕では「マネシツグミ」となっていた。大阪弁では「真似する人」ということをからかい気味にいうとき、「真似しぃ」という。そこで、「マネシツグミ」は大阪弁のようでおかしく思ったが、ちゃんとした名前なのである [2]。「マネシ」の「シ」がサ変動詞「する」の連用形ならば、それが体言「ツグミ」につながるのは奇妙で、方言的な感じがする。だからといって、「マネツグミ」では愛らしさが減るようであり、「マネスルツグミ」では、まったくさまにならない。いや、「シ」は教師、漫才師などの「師」で、「マネシ」は「真似の専門家」の意であろうか。

 文献3に「スカウトを演じたメアリー・バダムは、共演者の台詞を口真似してしまうという悪癖があった。そのため朝食のシーンを35回、昼食のシーンを23回も撮り直すことになった」という撮影の逸話が書いてある。バダムは、この作品で見せた演技で助演女優賞にノミネートされた(授賞式時点で彼女は10歳141日であり、1974年にテータム・オニールが10歳106日で受賞するまで、この分野における最年少ノミネート)そうだが、題名に「マネシツグミ」のある映画のヒロイン女優がマネシさんだったのである。

 グレゴリー・ペック演じる弁護士アティカス・フィンチは妻に先立たれながら、家庭ではよい父親であり、白人女性への暴行容疑で訴えられた黒人、トム・ロビンソン被告(ブロック・ピーターズが演じる)を裁く法廷においても、鋭い洞察と熱弁を発揮する。しかし、人種差別意識と先入観にとらわれた陪審員たち(すべて白人)は、無実の被告に有罪の判決を出した。落胆した被告は悲惨な死を遂げる。——間もなく日本で実現する裁判員制度において、そのような判決が出るようなことがあっては決してならないと思ったことである。——

文献

  1. Harper Lee, To Kill a Mockingbird, Reprint edition (Grand Central Publishing, 1988).
  2. マネシツグミ, ウィキペディア日本語版 [2009年5月19日 (火) 14:08].
  3. アラバマ物語, ウィキペディア日本語版 [2009年6月2日 (火) 01:59].

4 件のコメント:

Suzu-pon さんのコメント...

日本での裁判制度がどのように機能していくのかは正直な所不安なことも多いです。第一候補者リストが郵送で届いた時点で既に自分のブログで浮き足立ってそれを書いてしまうような人がいる中で果たして守秘義務は完全に守られるのかと思ったぐらいですし。

映画は私はまだ見た事がなくて原作も読んだことがありません。ですがこれを機会に是非観てみたいと思います。グレゴリー・ペックが私の好きな俳優の一人だということもありますが、ストーリーにとても興味を持ったからです。

Ted さんのコメント...

 おっしゃる通り、日本の裁判員制度は多くの不安材料を抱えています。『アラバマ物語』は、オバマ氏が大統領になった今も意義を失わない優れた映画だと思います。グレゴリー・ペックの演じる弁護士が息子や娘に対する接し方にも、よい父親の理想像が見受けられます。機会があれば、ぜひご覧下さい。

ETCマンツーマン英会話 さんのコメント...

映画『アラバマ物語』を見て、興味を持ち原作本も読み終えました。
日本の裁判における数多くの冤罪も思い起こされました。
今の日本にはフィンチのような父が必要とされていると感じました。

Ted さんのコメント...

 ETCマンツーマン英会話 さん、コメントありがとうございました。リンク先のブログを拝見しました。英国にお住まいなのですね。
 私も英書をよく読みます(多くは専門に近い物理関係のことを一般向きに書いた本ですが)ので、"Good Book Quide" などで、"To Kill a Mockingbird" の題名は知っていましたが、映画『アラバマ物語』を見るまでは、その原作とは知りませんでした。
 ことしの始めにお書きになったブログ記事に『1Q84』を英語版で読まれた話がありますね。私は村上春樹氏の作品をまだ一つも読んでいませんが、たまたま、けさの朝日紙に英訳で読んだほうがなじみやすいというようなことを書いている人があって、私も英語版で読んでみようかと思っていたところです。