2009年7月11日土曜日

日本の科学の明暗 (Good and Bad News about Japan's Science)

 Institute of Physics Publishing のウエブサイトは、さる7月6日、東京で開催された J-PARC 加速器コンプレックスの完成記念式典の模様について、同社発行の Physics World 誌編集長 Michael Banks 氏が記したブログ記事 [1] を掲載した(和文のニュースは [2])。そこでは、J-PARC が、中性子とミューオン源、陽子を 50 GeV まで加速できる装置、ニュートリノ源、これらのすべてを一カ所にまとめた、世界をリードする施設であるとして紹介されている。永宮 J-PARC センター長が「世界は中性子とニュートリノの新しい施設を作る方向に動いており、われわれがその先鞭をつけたことは喜ばしい」と Banks 氏に語ったことも述べられている。

 なお、J-PARC は高エネルギー加速器研究機構 (KEK) と日本原子力研究開発機構 (JAEA) が共同で、2001年から約1500億円をかけて建設を進めてきた研究施設で、原子核物理、素粒子物理、物質科学、生命科学、原子力工学の各分野での最先端の研究に役立てられる予定である。

 他方、Nature 誌7月9日号の社説は、文部科学省が先月発行した『科学技術白書』からの詳しい数字をもとに、日本が科学研究の盛んな国のランクづけ上位から転落しかけていることを論じている。白書が掲げている活性化策に反して、近年、日本の科学界で国際化や女性の進出が進んでいないこと、政府からの研究費支出の割合が少なく、それも一部の応用研究につぎ込まれるという傾向であること、などを挙げ、若手研究者への刺激と支えの欠如が日本の科学に曲がり角をもたらしている、と社説は分析し、警告を発している。この社説は、わが国の科学政策立案者たちにとくと読んで貰いたいものである。

文献

  1. Accelerator complex officially opens, physicsworld.com Blog (July 6, 2009).
  2. ここから始まる新しい世界!〜J-PARC完成記念式典〜, News @ KEK (2009年7月9日).
  3. Japan's Tipping Point (Editorial), Nature Vol. 460, p. 151 (July 9, 2009).

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