2009年7月19日日曜日

M.Y. 君からの感想(2009年6月分)

 M.Y. 君から "Ted's Coffeehouse 2" 2009年6月分への感想を7月16日づけで貰った。同君の了承を得て、ここに紹介する。青色の文字をクリックすると、言及されている記事が別ウインドウに開く。

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1. 『アラバマ物語』

 近くの市立図書館に暮らしの手帖社発行の『アラバマ物語』(菊池重三郎訳)がありましたので、ページをめくってみますと、映画のスチール写真が所々に入れてあり、グレゴリー・ペックや子役のメアリー・バダムを見ました。表紙の裏には、「この美しい小説を世のすべての親たちに捧げる。舞台はアメリカ南部の古い町、母なきあと父と兄妹の心にしみる愛情をヨコ糸に、婦女暴行の罪をでっちあげられた黒人の若者をタテ糸に、見事に織りなした人生のメロドラマ…」と書いてあります。

 アラバマ州といえば、南北戦争前に合衆国から脱退して創られたアメリカ連邦に属し、その首都となったモントゴメリーがあります。人種差別意識の強烈なこの州を舞台に小説が書かれ、ピューリッツァー賞が与えられたことは意義深いことです。この時代から、人種差別で虐げられた人に対して正義をなすことを賞賛する良心が生きつづいていたからこそ、オバマ氏が大統領に選ばれる時代を迎えたのでしょう。

2. 『天使と悪魔』

 私は『ダ・ヴィンチ・コード』の方は読みました。この小説がベストセラ-ランキング1位になり、シリーズ第1作の『天使と悪魔』が同時に売れ始めたということです。『ダ・ヴィンチ・コード』では死体がダ・ヴィンチの最も有名な素描(ヴィトルウィウス的人体図)を模した形に横たわっていたのに対して、『天使と悪魔』では胸にガリレオ・ガリレイ時代の秘密結社の名が烙印されていた。フィボナッチ数列とアナグラムに対し、アンビグラム。秘密結社シオン修道会(ニュートン、ボッティチェルリ、ユーゴ、ダ・ヴィンチなどの名が含まれる)に対し、ガリレオ・ガリレイ時代の秘密結社。探す物が聖杯(伝説)に対し、反物質(先端科学)。…というように、類似した道具立てと構成になっているようです。

 暗号が導く時間と場所的な広がりの中、犯人を追いながら核心に迫るストーリを、映画で見ながら理解するには、頭の回転を速めそのテンポに合わせ追っかける敏しょうさと勘が必要でしょう。筆者は「科学と宗教の対立を描いたように宣伝されているこの映画の最後に、両者の和解が見られるのはよいことである」「ローマのいろいろな名所からは、イタリア旅行の記憶が呼び覚まされた。…危機が迫る場面では思わず身を乗り出さんばかりにしながら、楽しく鑑賞した」との感想をまとめ、「CERNは考えられる三つの選択肢の中から、研究の真の姿を伝える好機にする、というものを選び、思い映画の作成に協力した」という旨の朝日紙記事を紹介しています。機会があったら見ようと思います。

3. 中国との交流記 (2)

 「中国との交流記 (1)」は2008年12月に掲載されています。ネイチャー誌2008年10月2日号にモハメド・ハッサン氏による「北京 1987年」という文が掲載され、それには、この年に中国が初めて国際会議を開催し、鄧小平が北京で各国からの参加者たちを歓迎し、中国科学界の国際化が始まった、とあったのを筆者は見つけました。筆者は、訪問記のもとになった中国の科学者たちとの接触は同じく1987年に始まっており、日中国交回復の年から見て遅かった思っていたが、それは中国科学界の「国際化元年」で、むしろ、大いに早かったのである、とコメントしています。

 受け入れ側の中国科学者たちの国際交流に対する熱意と期待が、これらの訪問記から感じ取られましたが、その理由が今わかり、そういうことだったのかと肯けました。当時の中国の文化と社会事情や個人的に感じられた問題点がよく描かれており、また、フェン教授と街を歩きながらの様子の記述と会話の内容も興味あるものでした。

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