2009年12月4日金曜日

M.Y. 君からの感想(2009年10月分)

 M.Y. 君から "Ted's Coffeehouse 2" 2009年10月分への感想を11月23日づけで貰った。同君の了承を得て、ここに紹介する。青色の文字をクリックすると、言及されている記事が別ウインドウに開く。

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1. 「ヴィヨンの妻」

 映画『ヴィヨンの妻』は「思ひ出」「灯籠」「姥捨」「きりぎりす」「桜桃」「二十世紀旗手」などの太宰作品のエッセンスを絶妙なバランスで融合したもので、主人公の人気作家は生きることに苦しみ、酒や女に溺れ、その妻は、夫が酒代を踏み倒した上、現金も盗んで来た小料理屋で働き、放蕩を続ける夫を愛し続けることを紹介し、「太宰の生涯を彷彿とさせる」と述べています。また、ウエブサイトで「ヴィヨン」が何者かを調べ、「『ヴィヨン』とは…高い学識を持ちながら悪事に加わり、逃亡・入獄・放浪の生活を送ったフランスの、中世末期の近代詩の先駆者フランソワ・ヴィヨンのこと。無頼で放蕩な人の例として使われている」と付記しています。

 私は高校時代に太宰の優しさのある、流れるような調子の文章が好きでしたが、『ヴィヨンの妻』の主人公の、考えらないような堕落した生活には、小説の世界に過ぎないものと嫌悪を感じたものでした。このたびフランソワ・ヴィヨンのことを知って、当時このことを知っていたならば考え方は変わっていただろうにと残念に思いました。

2. 「バランスの考慮」「言葉へのノーベル平和賞」

 「2009年のノーベル物理学賞は、光ファイバーによる長距離通信の先駆的研究をしたチャールズ・カオ博士と、光を電気信号に変えて画像化する電荷結合素子(CCD)を開発したウィラード・ボイル博士、ジョージ・スミス博士に贈られることになった。昨年のノーベル物理学賞が日常生活に関わりの薄い理論的研究に対して与えられたのに比べれば、今年の授賞は私たちのごく周辺にあるものへの応用に関連しており、ノーベル物理学賞委員会の深いバランス考慮がうかがわれる」としています。また、英文の本文には「CCDが天体観測に重要な道具となり、私の研究分野の放射線測定にも重要な役割を果たすようになった。光ファイバーの重要性も認識していたが、その発明者については知らなかった。ノーベル賞授与により発明者を知ることが出来てよかった」と記しています。

 10月9日の朝日新聞に、「光ファイバーの実用化に貢献したのは、住友電工など日本の企業だった。CCDについては、その後、素子に光を電気に変える構造を組み込むアイデアが出され、CCDは画像素子に使われるようになった。これも広く普及させたのは日本企業。ソニーは85年、CCDを使った初の8ミリ・ビデオカメラを世界に先駆けて開発。3人の研究は医療の現場も変えた。光ファイバーを使った内視鏡で開腹の必要のない手術が登場した。オリンパスは、のみ込むだけでCCDが体内の写真を撮るカプセル型の内視鏡を開発、昨年認可を受けた」と解説しています。発明された理論の実用化に日本企業の先端技術の貢献が重きをなしたことは喜ばしいことです。

 オバマ大統領の平和賞受賞について筆者は、「私はいささか早過ぎるように思ったが、同様な質問は授賞発表の記者会見でも出ている。オバマ氏は今後、提起した課題を実現に向けて動くことが大いに期待される」と述べています。

 10月31日の朝日新聞に「世界がオバマ氏を助ける必要」と題して、ノーベル賞委員会のヤーグラン委員長との会見記事が掲載されていました。その記事には、オバマ氏への受賞には「まだ実績がなく言葉だけだ」との批判もでたが、「言葉を侮ってはいけない。言葉は時に人に希望を与え、その希望が物事をよい方向に変える」とありました。

3. 「私の最初の著書」

 英文の "Passage through Spacetime: Random Writings of a Physicist" と題する筆者の最初の学術書でない著書が自費出版されました。英文ブログ本文に目次と表紙が掲載され、内容は全て、多年にわたって筆者のウエブサイトに掲載されたものを推敲してまとめたと記されています。表紙の絵は世界中に恒久平和が実現することを願いつつ描いた「スイスの山村の風景」ということです。青春の麗しいの思い出をもとに書かれた小説 "Vicky" が輝いて最終章をしめくくっており、しっかりした構成の格調高い著作です。出版おめでとうございます。

2 件のコメント:

  1. Tedさんの本、感想はまた別の時に書きますが、英語嫌いだった私が初めて1月以内に読み終えた本でした。

    オバマ大統領の演説へは賛否両論ありますが、その演説の数々の評価は今後の彼の実績によってまだまだ左右されそうな気がします。個人的には何故オバマ大統領がこの賞をもらったのか疑問に思っているのですけれど・・・

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  2.  Suzu-pon さんが英語嫌いだったとは思いませんでした。読んで貰って恐縮です。
     オバマ大統領が、ノーベル平和賞受賞講演で、戦争も時には必要ということをいわれたのは残念でした。前大統領の仕事を引き継いだ関係で止むを得ない発言だったかも知れませんが、アメリカ大統領としての限界を見る思いです。ブログ本文にも、これについて一言書きたいと思っています。

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