2005年1月17日月曜日

いかがわしい動きの根本

 犯罪の捜査に当たって、警察は容疑者の動機を重視する。同様に、いかがわしいものをかぎ分けるには動機を知ることが大いに役立つ。『日本の科学者』誌で 2005 年 2 月号から始まった「改憲問題の焦点」と題するシリーズの第 1 回において、金子勝(立正大学)は、改憲の動きの根本にある動機を明らかにしている [1]。彼はそれを、「グローバリゼーション」と「1996 年日米安全保障条約」体制という二つのものを確立させようという衝動だと見る。

 金子は、「グローバリゼーション」は「経済の地球規模化」と訳されているが、その本質はアメリカの「多国籍企業」中心主義であり、「ネオリベラリズム」(新自由主義)とそれを保証するための「グローバル・スタンダード」(世界標準)という二つの要素で構成されている、と説明する。さらに、「ネオリベラリズム」の内容は、「多国籍企業」の活動を阻害するものをすべて緩和・撤廃して行くものであり、「グローバル・スタンダード」の内容は、アメリカの「国家」や「多国籍企業」の基準・規則・体制を世界各国が受け入れるべきであるとするもの、と述べる。

 金子はまた、「1996 年日米安全保障条約」体制とは、「多国籍企業の横行を保証するため」の、それに反対する者を恣意的に攻撃する米国至上主義型日米核軍事同盟体制と見る。そして、対米従属的であっても、日本の「多国籍企業」、その安全と繁栄を実現しようとしている財界やその政治的代理人にとっては、アメリカに寄生して金もうけができるこの体制は、死活的に重要である、と説明する。

 この見方によって、政府、そして、自民党から民主党にいたるまでが、第9条を焦点とした改憲に意欲的である理由がはっきりする。それは、けっして日本の大衆を幸せにするものではない。アメリカが国連の支持を得ないでイラクを攻撃した理由も、「グローバリゼーション」の本質から見えてくる。

  1. 金子勝『日本の科学者』Vol. 40, No. 2, p. 30 (2005)。

コメント(最初の掲載サイトから若干編集して転載)

テディ 01/17/2005 23:32
 しかし、現時点においてもグローバリゼーションは限界に来ていると思われます。彼らは短期的視点しか持たないため、永劫未来、経済の拡張は可能であると思っている(資源の枯渇、環境問題に対しても新しい技術=テクノロジーで対処できるという楽観的な見方をベースとして)ようですが、新たなテクノロジーは副産物として新たな(資源、環境あるいは全く未知の)問題を生み出すのは、原子力の時にも経験してることではないですか。最も簡単で効果的な人間の生き残る道は「成長」をやめることではないのでしょうか。それをなぜ彼らは恐れるのでしょうか?

Ted 01/18/2005 07:55
 そうです。テディさんが紹介され、また訳された 1 月 1 日付け New York Times 紙の Opinion 欄 "The Ends of the World as We Know Them" で James Diamond も "In this fresh year, with the United States seemingly at the height of its power" という言葉を使っています。これは、アメリカはこのままでは下り坂を滑っていく他ないことを意味しています。グローバリゼーションをもっと進めようとしている人たちには、その事実が分かっていないのです。彼らは自然と調和した、つましい生き方を学ばなければなりません。

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