2005年5月21日土曜日

靖国問題とは

 [四方館さんの「ひよいと穴からとかげかよ」にトラックバックして書いたものである。トラックバック先の記事はプロバイダーの事故により消滅したが、記事の関連部分は以下の通り。]

<靖国問題を根源から問う>
中国や韓国から歴史認識問題や首相の靖国神社公式参拝で厳しくも激しい批判を浴びるなか、就任以来の高支持率も低落の一途をたどり今やただのガンコおやじに成り下がりつつある小泉首相は、なおも参拝の継続に意欲を滲ませている。…



 日本共産党の不破哲三議長が2005年5月12日の時局報告会でおこなった講演の要旨を、インターネット上で読むことができる [1]。その中に、「靖国神社の問題とはなにか」と題する部分がある。これは、この問題のたいへん平易で分かりやすい解説である。多くの皆さんの一読をお奨めしたい。

 忙しい方がたのために、ごくかいつまんで紹介すれば、次の通りである。

 靖国神社は、戦争中、国民を戦場に動員する役割をになった神社であり、その成り立ちを考えただけでも、そこへの参拝を戦争への反省とすることは、道理に合わない。それに加えて二つの重大な問題がある。一つは、1978年10月、国会も国民も知らないうちに、戦争を起こした罪を問われたA級戦犯が戦争の犠牲者として合祀されたことである。もう一つは、靖国神社が「英霊の顕彰」と「英霊が生まれた近代史の真実を明らかにすること」を使命としていることである。したがって、靖国神社は、「日本の戦争は正しかった」という、ヨーロッパでいえば、ネオ・ナチの精神に匹敵する立場を、日本の国民に吹き込む政治目的を持った運動体なのである。

 上記の二つの重大問題については、「やすくに大百科:私たちの靖国神社」という、同神社へ行けば誰でももらえるリーフレットや、同神社にある「遊就館」という展示館の紹介書『遊就館図録―靖国神社』、そして、同神社の後援でつくられ、ビデオとして販売されているドキュメント映画「私たちは忘れない」(ここでいう「忘れない」は、日本の戦争の、彼らが「真実」と称する歴史や、英霊たちの「武勲」を忘れてはならないという意味)の中身を引きながらの説明となっている。

 このような神社に首相が公式参拝するならば、日本は侵略戦争を反省していない、と外国から見られて当然である。なお、不破議長の紹介している靖国神社の性格については、同神社と遊就館のホームページ [2, 3] において、直接確かめることもできる。

  1. 日本外交のゆきづまりをどう打開するか、しんぶん赤旗 (2005年5月17日).

  2. 靖国神社

  3. 遊就館

 
[以下、最初の掲載サイトでのコメント欄から転記]

くうママ 05/21/2005
 靖国神社の本当の姿、ネオ・ナチの精神に匹敵する立場というのは本当に、まったく知らなかった事実で、なぜ靖国参拝に騒ぐのかと不思議に思っていたくらいでした。めちゃめちゃびっくりな真実。これからは、ニュースを見る視点が変わりそうです。

Ted 05/22/2005 07:54
 ニュースを見るには、メディアのいうことをうのみにしないで、日頃から幅広い意見に耳を傾け、自分独自の判断力をもつように心がけなければなりません。

ヨハン 05/21/2005 21:10
 流石は Ted さん、いつもながら考えさせられます。A 級戦犯、英霊、戦没者、あるいは犠牲者、捉え方によって幾様にも表現できる日本人の曖昧さもあるのでしょうが一国の首相であるなら個人の主観より被害国の客観的な捉え方を理解すべきである。にもかかわらず…。政治家や政党を批判をしても無意味かも知れませんが、先日の歌舞伎町視察の発言に小泉首相の志の低さが感じられたのは私だけでしょうか。

Ted 05/22/2005
 プラトンの国家論は、国を守る兵士の勇気を国の三要素の一つとするなど、現代にふさわしくないものではありますが、統治者は哲人でなければならない、という点は、いまの日本の政治を動かしている人たちに学んでもらいたいものです。

Yasuyama 05/21/2005 22:11
 どうなんでしょ。 参拝を決行される方々が それ程信心深い方々とも思えないんですけど。で、参拝することによるデメリットというのは私でも判るのですが、判らないのが 参拝するとどんな御利益があるんでしょうか。これに触れた文章をついぞ目にした事がありません。今の時点で遺族会にそれほどの集票力が有るとも思えないし謎です。いやぁ、何かきっと良い事があるにちがいないと思ってしまうのは下司の勘ぐりなのかなぁ。

Ted 05/22/2005
 「良い事」は、わが国を好戦的な国へ導けばば、アメリカとの結託がいっそう強くなり、いま政治を動かしている人たちや彼らと結びついている財界の人たちの利益がますます増大する方向へ国内政治も持って行きやすくなる、ということだと思います。裏に経済という大きな動機のあるのが、いまの政治です。

K_Nabeshima 05/22/2005
 Ted さん、こんにちは。以前にこちらでご紹介いただいた「憲法9条を守ろう、活かそう/アピール用フリー素材&ネタ」をやっている K_Nabeshima です。すでにご存知かもしれませんが、拙サイトで「靖國」にちなんだ「米國参拝」という番外編ネタを5月5日にアップしました。よかったらご笑覧ください。http://www3.to/9jo/#39
 また、「世界物理年」にちなんで、浅学をかえりみず「平和憲法の理論式」なるものをつくってみました。導出過程の論述はなく結論のみの公開という怪しげな式です(苦笑)。専門家のご批評を賜りますれば、さいわいです。http://www3.to/9jo/#41

Ted 05/22/2005
 「米國参拝」と「平和憲法の理論式」を拝見しました。P = mc^9、よく出来ています。文句のつけようがありません。近日中に引用させていただこうかと思います。「原爆に関するアインシュタインのことば」というブログを準備中ですので。

四方館 05/23/2005
 重ねてのTBどうも畏れ入ります。コメントが遅くなりました。不破さんの説明はとても明快で判りやすいものですね。明治の初期以来、国体護持を体現している靖国の特異性というものが戦後処理の中で封殺できなかっのは禍根の残る問題ですネ。私にはガンジガラメの感がしてきます。

Ted 05/24/2005
 「ガンジガラメ」とは、靖国参拝反対の勢力にとって動きがとれない、という意味でしょうか。何とかして、はね返したいものです。

四方館 05/24/2005
 ひとり靖国問題のみに拘わらず、天皇制維持とセットになり、尚且つその上に、戦後60年という長い歳月を、憲法の根幹に関わるような路線変更を解釈論議だけで済ませてきた幾多の政治的事実の積み重ねに思いを致さば、やはり取り返しのつかなさを感じざるを得ないという意味です。

Ted 05/25/2005
 「幾多の政治的事実の積み重ね」はすべて、日本の政治の右傾化に関わる問題ですが、どう解決されるべきかについては、個別の対策があり得るし、また、「取り返しのつかなさを感じ」る中にあっても、少しずつでも取り返す方向に努めるべきだと思います。

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