2005年5月20日金曜日

M・Y 君からの感想(2005年4月分)

 さる5月10日付けで、M・Y 君から "Ted's Coffeehouse" 4月分への感想文を貰った。やや長いが、同君の了承を得て、ここに全文を紹介する。赤茶色の文字は関連ページへのリンクになっている。




 4月のTed's Coffeehouse を読ませていただきました。感想を以下に記します。

1. 随筆

(1) 世界平和アピール7人委員会の核廃絶に関するアピール
 5年に1度開かれる核不拡散条約再検討会議(5月2日から)に合わせて表記委員会の「核兵器使用60周年にあたり日本国民と政府に訴える」「再検討会議に際し、核軍縮への具体的努力を」「核兵器依存の即時停止と速やかな廃絶を」の3つのアピールを再録されたことは、時宜を得て有意義だと思います。同委員会の1955年以来の70余回におよぶ国内外へのアピールの発信と委員メンバーの変遷を見ますと、平和運動の歴史の重みを感じます。

 核戦争が起こると、地球は急速に冷え、「核の冬」が訪れ、文明は崩壊し、人類は絶滅するだろう、と予測し、核専制攻撃や核シェルターなどの一切の生き残り戦略を無効と主張する M・ロビンソンの『核の冬』(岩波新書)を読みましたが、核廃絶に説得力のある書だと思います。

(2) ハンス・ベーテはいわば私の恩師の一人
 アナン国連事務総長の説く今回の核不拡散再検討会議の意義と、ハンス・ベーテの遺志に沿ってNPTの有効性と信頼性が強化されるようにとの筆者の願いが書かれてあり、上記 (2) の随筆とも関連深いものです。本随筆への Y さんの4月29日付けコメントを興味深く読ませていただきました。

(3) 多重の安全対策を:JR福知山線の大惨事に思う
 スピ-ドの自動制御装置の改善、急カーブの改善、軽車両化の見直し、線路とビルの距離の制限等々、多重の安全対策を施すことの即刻実施が必要と、事故翌日に書かれています。短時間の間によく事故の本質を見ておられると思いました。

 「安全を優先する企業風土」を醸成すること、これはJR西日本だけでなく全ての企業が心すべきことです。ことに、原子力、航空において。しめくくりの「地球最後の日をかいま見る思いがする。地上にすでに生命はなく、巨大化した太陽のみが君臨する。人間のいのちの連帯感がもたらすイメージだろうか」は、私には核の冬を想像させます。

(4) Wedding Invitation from India (インドから結婚式招待状)
 インドの富裕階級の結婚式とはこんなものなのでしょうか。関係のあった人に祝って貰う他、結婚式を通じて多くの人々に社交の場を提供する、なんと鷹揚で社交的な民族でしょうか。

(5) 時間について学位論文のこと
 これらは Y さん宛ての書簡形式がとられおり、一般の読者への話題の提供の仕方に工夫がなされていると思いました。時間については、難しいでしょうが、これが理解の糸口となることと思います。

2. 写真

(1) 桜
 4月11日の写真の説明にあるように、今年はエコーの桜記事募集イベントのお陰でいつになく丁寧に桜を見物されたとのこと。3月29日のサクラがまちかまえているから始まり、4月3日、大阪開花の日、堺のわが町ではの大阪城公園の標準木による大阪気象台の開花宣言直後に観察した堺・上の桜並木、阪南の名所・山中渓の花曇りの桜、4月8日のいま満開、堺市わが町近辺と続きます。

 さらに、堺の桜名所浜寺公園の賑う花見客、4月11日の名残を惜しむのクローズアップ、まだ楽しめる桜:堺市大仙公園の有終の美を誇っているシダレザクラ、4月15日のこれから咲くサトザクラは、『植物の世界』によれば、オオシマザクラを中心にして他の種との間の複雑な交配によるもの、と生成の由来を調べます。

 このように、2005年の各所の桜の花が、蕾のころから散り際におよぶまで、みな美しく撮られ、簡潔な説明付きで見ごたえがありました。今年は開花宣言の日から急に暖かくなり満開の見頃の期間が短かったので忙しかったですね。よい記録として残るでしょう。

(2) 安土へのハイキング播州赤穂への旅行
 いずれも「駅からはじまるハイキングマップ」に従って散策されたとのこと、安土城址へ行くには大きなステップの石段450段も登らなければならず、奥様は平気で、貴君には少し苦しいとは、ほほえましい情景を思い浮かべます。三重の塔に耐震構造の古来の知恵を思い、田園風景の道は詩情豊かに撮れています。

 私は播州赤穂は車窓で眺めただけなので、説明文とともに素晴らしい播州赤穂のスケッチと、4月29日などの記事にカットとして添付されている写真を楽しく拝見しました。辿られたコースもよかったですね。天気にも恵まれ、その上、八重桜が盛りでよい旅でしたね。

3. 交換日記

(1) Ted と Sam の交友の動機
 当時の Ted の4月9日の日記に、「指導資料」の記載にあたり、Sam との交友について、「中学校で学習上から」「ものの見方の共鳴」と記入した、とあり、交友の動機と内的な絆が分かります。日記を読み進めると、Sam は楽天的な行動派、Ted は思索的ではっきりしない性格と、相異なる点がお互い引き付けるところがあったことと推察します。

 例えば Sam は何?何だって?に「ぼくに生徒会会計をとは一体全体何事だ。何をしてよいかさっぱり分からないが」、とたじろぎながらも「何とかなるだろう、という気持ちが心の中に働いている。そして、たいていの場合は、わずかばかりの成果に、何とかなったんじゃないかと満足して、それに安んじているだろう」と書きます。地球の静止する日でも、Sam は「僕は今年度も執行委員にまつりあげられてしまった。挨拶にはへんちくりんな副詞ばかり並べておいてやった。一度笑いが止まらなくなって、次の言葉が出なくなってしまった」と飄々としています。

 他方、Ted はたいへんなことだで、年度最初の新聞クラブ会合で編集長に選ばれ、「重大なことだ。たいへんなことだ。どうしても、しっかりやらなければならない」と完全主義です。さらに、やはり不安であるでも、「活発でなく、覇気に乏しく、まずかった。やはり不安である」と述懐しています。トラの行列と花火とで、Sam は冒頭に、「Ted よ、僕を待ったりすることなく街へ出て、何か得たかい」と記し、快晴の中で祭りと花火を愉しんでいます(この情況も生き生きと描写されています)が、同日の Ted の日記は一言、「苦悩と、もがき」なのです。

(2) Ted と Sam の切磋琢磨
 Sam はなるほど、こういうふうに書けばで、Ted のような表現ができない、といって、Ted の表現力を学ぼうとしています。いそがしくて、ひじょうによいことだでの、Ted の「ぼくの直さなければならない点があるかい」との疑問に、Sam は「いかなる愚問に対しても、はっきり意思表示すること、これはちょっとばかり強調しておこう。これはくどくどノートに書いているより実行が必要だ」と注記しています。

 また、三分の一去ってまた一難で、Ted は「ぼくが苦しめられるのは、ぼくの弱さのためにほかならない。Sam がぼくに与えた宿題の究極の問題が、いよいよ具体的にぼくがいやでもそれと知らなければならなくなりつつあるのだ」と書き、次の日には「強い自尊心を神がかり的なまでに保持していて…(略)…いままでのぼくだったことを発見した。…(略)…この発見はSamが昨年の夏休みに読んだ本から抜粋して書いてくれた二つの自我自覚の形…(略)…に属する考えから出されたものであって…」とあり、交換日記で互いに切磋琢磨している様子がうかがえます。

(3) Ted の懊悩、思索と青春の憧れ
 一人深い山奥へ入り込みで、Ted は「やろうとしないで、やってみないで、胸に重荷しばりつけている。――ユダヤ人はバビロンの幽囚となったが、ぼくは苦悩の幽囚になりかけている」と悩みます。Ted はまた、くるっとして輝く目と…で、女生徒たちの顔や姿に魅せられながら、「緑色の躍動的なセータ姿といい、次の世代に対する力強い希望を感受してよいように思う。だが、…それより先に、自分自身のしなければならないことがある。」と、勉学に打ち込みつつも青春の憧れを抱き、さらに、思索し悩む(0と100の中庸われわれに必要なことは何なのだ?)というように、多感な時期を過ごしています。

(4) 映画
 映画のことがよく出ます。『月世界征服』『モホークの太鼓』『わが谷は緑なりき』等は当時私も見ています。『わが谷は緑なりき』はアカデミー賞授賞作品で、多分我々の学校推薦の映画だったと思います。19世紀末の英国の炭鉱町が舞台で、主人公の回想の物語りです。家族愛で結ばれながらも、Sam の日記に書かれているように落盤事故、ストライキ、家族の死、姉は不本意に嫁ぎ、自分はいじめられるというように、語られることは陰惨で不幸であるが、主人公の回想の情景はしみじみとした味わいで美しく描かれ、モーリン・オハラの控えめながらも芯の強い女らしさに魅力を感じた印象に残る映画でした。その後に見た美しい回想で物語られる邦画の「野菊の如き君なりき」に構成手法の共通点を感じました。

(5) その他
 別れには、互いに一目置いていた友人との惜別の情が、しんみりと美しい文章で書かれています。ひらひらひらひら花びらがは、Sam の巧みな情景描写です。そこにはまた、Sam が Ted と上述「別れ」の友人 KZ 君を視野に認めたが、遠慮して声をかけなかったことを悔やむ繊細な気持ちがよく書かれており、義足をつけた白衣の傷痍軍人が「異国の丘」や「湯の町悲歌」など歌っている情景は当時を偲ばせます。

[以下、最初の掲載サイトでのコメント欄から転記]

Y 05/21/2005
 本当に丁寧にご感想を寄せてくださる方がいらっしゃるのですね。私も、このブログでTed さんが綴っておられる work は、本当に読みごたえがあり、さまざまなご感想やご意見をお受けになると良いと、思っています。また、読者さんに比してコメント者が限られていますので、このようにご感想を時々公開していただけると、嬉しいですね。
 M・Y さんがご覧になっているとおり、多彩な内容が組まれているので、毎日飽きることがありませんし、私たちにとって大変豊かな勉強になります。

Ted 05/21/2005
 これほど丁寧に読んで貰えると、いい加減なブログは書けません。(Ha-ha!)M・Y 君はありがたい友人です。
 私のブログへの身にあまる Y さんの賛辞、恐れ入ります。

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