米統合参謀本部が作成した「統合核兵器作戦ドクトリン」第2次最終調整版(2005年3月15日付け)には、戦域核兵器が使用される具体例として、「米軍・多国籍軍・同盟軍か市民に対して大量破壊兵器を使用するか使用する意図を持つ敵」が挙げられているという [1]。大筋でいえば、大量破壊兵器を使う「意図」があるだけで、核兵器による先制攻撃をする、ということである。
この論理によれば、アメリカこそが真っ先に核兵器によって先制攻撃されなければならないことになる。カリカチュアを地で行くような愚かな指針案である。この案は、数年にわたって議論が重ねられてきて、年内に完成するものだとか。核兵器の廃絶こそが世界の多くの人びと声である。このようなドクトリンを決定したのでは、アンクル・サムは世界の笑いものになるであろう。
しんぶん赤旗 (2005年5月13日).
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ブッシュ対アインシュタイン (2005年2月12日).
[以下、最初の掲載サイトでのコメント欄から転記]
Y 05/14/2005 11:25
なんというか、もちろん私はとっくに「戦後」の現代っ子なので、戦争による被災地というのを自分で実際に訪れたりして、本当に目にしなければ、私にはもっと大切なことはわからないのではないかなあ、と思うのですね。政治の指針案には、この「市民・国民の本当の現実にじかに接した際に生まれるはずの、何か強いもの」がなく、政治的、というより、戦闘の威力を発揮する可能性を拡大している意思に、何の希求精神があるのかがみえてこないのですね。「大きなものを使う人は、小さな一市民の余りに不条理な(被災などの)現実が真にはわからないだろう」と、私の立場からは思えるのですね。
Ted 05/14/2005 18:00
由名さんは現代っ子でも、核兵器使用指針案の問題点の核心をずばりと指摘しておられます。希求すべきものは平和であるのに、気に入らない国は一般市民の多数の犠牲をも顧みないで力で叩く、それも核兵器という非人道的なものを使って、というような、道義的に許されない指針案です。
tosiki 05/14/2005 16:10
逆に言えば、自らの特権意識を露呈していることにもなるかと思います、成文化しなくともほとんど公知の事実となっていますが。成文化することで明らかに宣言するのであるなら、国際社会はそれを看過してしまうと取り返しがつかないということになる。どうなってしまうのでしょう、祈るような気持ちです。
Ted 05/14/2005 18:04
各国の政府が米国に対して批判すべき問題ですが、日本のいまの政府には、それが出来ないでしょう。情けないことです。
ヨハン 05/14/2005 20:22
おっしゃるとおりです。第二次大戦以後、どんどんおかしくなっていく軍事大国に恐怖を感じる一人でした。一方で映画や絵画など自由主義ならではの素晴らしい一面もあるのに、対照的に暴力絶対主義な部分が残念でなりません。自分達しか出来ないと思い込むエゴが世界を不幸にしている事に気付く日はいつ来るのでしょうか…。勝てば官軍、大嫌いな言葉です。
Ted 05/14/2005
昨年の大統領選挙で、ブッシュはぎりぎりの過半数でした。アメリカ国民が政治を変えるのも遠いことではないと思いたいです。2人ばかりですが、私のアメリカの友人たちも、ブッシュの当選を残念がっていました。
Y 05/14/2005
簡素な私の意見をご評価くださり、ありがとうございます。何よりも私の立場からはっきりと申し上げたいのは、このアメリカの「ドクトリン」など、長くアメリカが積極的に見せ付けている行動は、何も「政治」や「政治的行為」ではない、ということです。こうした行動に「政治」という言葉で国策の賢明さという価値を付与しようとしても、無駄です、それは「政治」という言葉の尊厳をおとしめる行為です。もちろん、日本でもいくらでもその種の小型版(?)がなされてきましたが。
私に素晴らしい意味での「政治」という言葉を教えてくださったのは、意外ですよ、精神分析学・精神病理学の日本のトップ、新宮一成先生です。学問界でよくなされて(拘泥されて)いる、学派対立や流派対立ではないのです、国内であれ世界の場であれ、学者が社会的にしなければならない「政治的な行為」(私たちの分野では、まず著書論文をあらわす、ということですが)があるのですね。新宮先生は、そこまでのスケールで学問や著書を考えられる先生です。
ですから、私が学者に復帰して、「福祉の政治をします」と言っているのは、そのような冷静な、しっかりした根拠(現場や学的根拠)をもった「政治」があり、それをなるべく賢明におこなっていこうと考えているからです。もちろん、しなければならない事は多いので、段階的に。
Ted さんにも、Ted さんだからこそお出来になる、Peace &Politics の行為を様々な範囲の思慮を活用されて、今後もしていっていただきたいと、期待しております。
Ted 05/14/2005 22:27
そうですね。しっかりした福祉をする、しっかりした科学をする(そのための条件整備を「政治家」に要求もしながら)、そういうことこそが本当の「政治」です。
テディ 05/15/2005
このドクトリンが正式に決定されたらそれはかなり全世界にとっての「脅威」でしかないでしょう。先のイラク戦争の場合も、ありもしない「大量破壊兵器」の脅威を簡単にでっちあげて、どう考えても米国自身にとっても絶対的な必然性のない戦争を始めた国です。「大量破壊兵器使用の意図」なんていくらでも勝手に創り上げてしまうでしょう。この「第2次最終調整版」が本当に報道された内容であるのなら、かなりネオコンの息のかかった案になっていると思われますが、さて最終的にどうなりますか注目したいものです。
Ted 05/15/2005
ブッシュ政権の外交政策を先導しているシンク・タンク「アメリカ新世紀プロジェクト」(PNAC) の思想的支柱と目されているロバート・ケーガンは、ネオコンのイデオローグだそうですから、「ネオコンの息のかかった案」であるのも当然でしょう。[ロバート・ケーガン著『ネオコンの論理』(光文社)の紹介ウエブ・ページ参照。]
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