2005年3月11日金曜日

横浜事件の再審が認められる

 太平洋戦争中最大の言論弾圧事件として知られる横浜事件について、東京高等裁判所は、3 月 10 日「元被告らの自白は警察官の拷問によるもので、無罪を言い渡すべき証拠にあたる」と指摘し、横浜地裁決定に続いて再審開始を支持した。有罪判決から 60 年を経て元被告ら全員が亡くなっており、遅きに失してはいるが、戦時中に起こった言論の自由をめぐる事件に高裁でも再審が認められたことは、歓迎しなければならない。

 ところで、上記のニュースを伝える 3 月 10 日付け朝日新聞夕刊の記事は、やや不親切である。高裁決定の骨子の概略が 3 項目まとめられているうち、最初の項目は、
●ポツダム宣言受託で治安維持法の規定が効力を失ったとして、再審開始を認めた一審の判断理由には疑問がある

となっている。これは元被告らに不利な結論と取れ、ニュースと矛盾するように思われる。この項目に関連する説明がないかと記事を何度も読み返したが、見当たらない。

 しかし、同じ朝日新聞のウエブサイトの記事には、次のような説明がある。短いが、よく納得できる文である。

高裁決定は、横浜地裁が治安維持法の失効時期を「ポツダム宣言受諾の時点」とした点については「見解は様々で、にわかに決めがたい」と指摘した。一方で、…
高裁は、地裁が理由とした「法令適用の誤り」は疑問視したが、元被告らが「拷問を受け、虚偽の自白をした」ことを重視したのである。

 ポツダム宣言受諾が直ちに国内法の失効につながるかどうかは、確かに、「にわかに決めがたい」かも知れない。ただし、戦時下の行き過ぎた取り締まりから生じた裁判に、敗戦後有罪判決が下されたことは奇怪であり、これに対する横浜地裁の再審開始決定を検察側が不服として即時抗告し、今回の裁判に到ったのも奇怪である。検察とは、単により多くの犯罪者を作り出すためだけの職業であるのか。あるいは、検察は治安維持法時代の取り締まりを、なおよしとする精神を秘めているのか。

コメント(最初の掲載サイトから若干編集して転載)

M☆ 03/11/2005 19:40
 戦争中には色々な「事件」があったことでしょうね。教科書には載っていない(731 部隊もそうですね)様ざまな事件が起こり、いま生きている若者はその事実すら知らないで毎日を生きているわけで …。こうした 60 年も前のことを例え当事者が亡くなっていたとしても、再び取扱い、いま一度考え直す機会があるというのは、とても貴重なことだと思いました。

Ted 03/12/2005 07:52
 3 月 10 日は東京大空襲(死者 10 万人以上、被災者 100 万人以上)から 60 年でした。また、3 月 13 日は第 1 次大阪大空襲(終戦前日までの 8 回の大空襲による死者 1 万 5 千人、被災者 122 万 5 千人)から 60 年になります。このような悲惨なことが二度と起こらないように努めたいものです。

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